延べ267万人感染し、ICU(集中治療室)がパンクし、155万人が死亡し、そのうちワクチン未接種の60歳以上の高齢者が74.7%を占める……中国がオミクロン株に対して「放置」という戦略を選択すれば、このような驚くべき結果になる。上海市重大感染症・生物安全研究院の学術リーダーで、復旦大学公衆衛生学院教授の余宏傑氏のチームがこの最新のシミュレーションデータを発表した。関連する成果は10日、「ネイチャー・メディシン」誌に掲載された。科技日報が伝えた。
中国は感染症に対して、各種の非医薬的公衆衛生対策(NPIs)を総合的に採用し、「動的ゼロコロナ」対策を堅持すると同時に、免疫の壁を構築するべく、新型コロナウイルスワクチンの接種を加速させている。4月18日現在、3歳以上の人の約91%が基礎接種を終えており、うち54%の人がブースター接種を終えている。
だが現在の全体的な免疫水準では、オミクロン株の感染拡大を防げないことが事実によって証明されている。中国大陸部では2022年3月1日から5月9日にかけて、オミクロン株の現地感染者が73万人以上報告されている。
作者によると、研究チームはオミクロン株の感染力ともたらしうる医療的負担に対して、ワクチン接種率、人口の年齢構造、人々の接触スタイル、医療資源などの地域差を総合的に考慮し、上海市、山東省、山西省という3つの省・市のモデル分析を行った。
その結果によると、病院の病床の需要から見ると、単一の干渉措置を講じた場合、感染ピーク時に病床を使用する呼吸器疾患患者が157万人にのぼる見込みだ。この数値は中国の既存の呼吸器感染症関連の病床数(310万床)を下回っている。しかし感染ピーク時のICUの病床の需要のピーク値は、中国の既存の病床数の1.7−15.6倍と大幅に上回り、流行期間中に病床が19−48日にわたり不足する可能性がある。
オミクロン株がより高い感染力と免疫回避能力を持つことから、厳しい措置を講じずに中国で流行した場合、非常に深刻な医療負担と医療資源不足が生じ、特にICUの病床が不足することになる。
モデルシミュレーションのベースライン結果によると、全国範囲で大規模な厳しい非医薬的公衆衛生対策を採用しなければ、2022年5−7月に流行のピークが生じる。6カ月のシミュレーション期間中、オミクロン株の流行で延べ508万人が入院し、延べ267万人がICUに入り、155万人が死亡する。これに対応する入院率は3.60‰、ICU入院率は1.89‰、死亡率は1.10‰。そのうち、ワクチン全過程接種を終えていない5200万人近くの60歳以上の高齢者が、死亡患者の74.7%を占めることになる。
最小の医療負担により中国の対策を大流行抑制段階から常態段階に移行させることは、現在解決が急務となる科学的問題だ。
研究者は、ワクチン接種(特に60歳以上の高齢者)、抗ウイルス薬による治療、非医薬的公衆衛生対策という3つの措置が非常に重要とした。状況のシミュレーションによると、そのどれか一つだけではオミクロン株の打撃を季節性のインフルエンザ(中国の毎年の死者は約8万8000人)以下に抑えることはできず、また感染症とりわけ重症者の治療の医療資源への打撃を防げない。
研究は、ワクチン接種、抗ウイルス薬による治療、非医薬的公衆衛生対策の3つの干渉措置を総合的に採用し、特に60歳以上のワクチン接種率を早急に高め、そして抗新型コロナウイルス薬を確保し脆弱な人々を保護するべきと提案した。そうしなければ、高い強度の非医薬的公衆衛生対策を維持する必要がある。重症者の治療サービス体制の構築、保護効果がより高くより長期的に効果を発揮する広域スペクトル活性を持つ新型コロナウイルスワクチンの研究開発が将来の対策の優先事項だという。(編集YF)
「人民網日本語版」2022年5月13日