そしてほどなくして、ヘッドセラピストや塗装工、客室清掃員、機械組立工など第1陣となる人材募集情報が、フレックスタイム制の「ママポスト」というネーミングで、中山市婦女聯合会の微信(WeChat)の公式アカウントで配信された。
すると、大きな反響があり、2-3時間でクリック数が6000-7000回に達したといい、同聯合宣伝・教育グループ連絡部の張慧部長は「こんなことは非常に珍しい」と振り返った。コメント欄にはネットユーザーから、「各鎮・区に普及させてほしい」や「編集、校正といった一定のスキルが必要なポストも増やしてほしい」というメッセージが寄せられたといい、余会長は、「これらのフィードバックを見て、出産後も女性は働くことを強く願っていることが分かり、『ママポスト』の導入を続ける決意を強めた」と話す。
「ママポスト」設置で女性の労働参加率高まる
「ママポスト」設置について、一部の企業は取材に対して、「社会的責任を担うことを考慮に入れた『利益還元』活動だ」との見方を示した。黄さんが働く会社の責任者・余清さんも当初はそう考えていた。
そして、「『利益還元』という言葉を使うのは、出産後の女性を雇用する場合、企業が支払う人件費が多くなるからだ。黄さんが働く流れ作業を例にすると、いつ休むか分からないため、生産に影響が出ないように、オールラウンドをカバーできる従業員のポストを増設し、いつでも代わりを配置できるようにしておかなければならない。企業にとっては、労働時間という面でも損失が出るし、生産の流れや管理の変更など、余分なコストが必要となる」と説明する。
しかし、余さんは、「ママポスト」で働く女性は、仕事の時間こそフレックスタイム制であるものの、意外にもその業績はとても高いことを発見したという。統計によると、「ママポスト」で働く女性の場合、流失率は約5%ととても低い。その他のポストの従業員は15%になることもざらで、季節によっては30%を超えることもあるという。また、帰属感が強く、忠誠度も高いため、「ママポスト」の作業効率や製品の合格率も他の従業員よりも高くなっている。そのため、同社はハイエンド製品の生産を「ママポスト」で働く女性に安心して任せているという。
近年、中国の経済や社会が発展するにつれて、出産率は低下し、労働力人口は減少の一途をたどり、人口ボーナスが不可逆的に少しずつ減少するというのが現状だ。鄭州大学商学院の陳梅准教授は、出産適齢期の女性は出産という重要な役割を担っているだけでなく、社会における大切なヒューマン・リソースでもあるとの見方を示す。「中国の人口の半分を占める女性が、労働力において重要な位置を占めていることに留意しなければならない。人口ボーナスが少しずつ減少しているのを背景に、『ママポスト』といった柔軟性のある雇用ポストを設置することは、女性の労働参加率を高め、女性労働者やスキルを活用し、経済成長を促進するうえで重要な意義がある」との見方を示している。
そのため、多くの学者が「人口ボーナスから男女ボーナスに目を移し、女性の労働参加率を高め、女性労働者やスキルを活用すれば、新たな経済成長をもたらし、経済、社会の面で大きな影響を及ぼすことができる」との見方を示している。(編集KN)
「人民網日本語版」2022年8月10日