女性は、出産という重要な役割を担っているだけでなく、社会における大切なヒューマン・リソースでもある。しかし、出産と仕事の板挟みになっている女性も多い。そんな中、広東省中山市などの地域では最近、女性のために設置された、フレックスタイム制で仕事と家庭の両立が可能な働き方ができる勤務形態が注目を集めている。この勤務形態ができるポストは「ママポスト」と呼ばれている。光明日報が報じた。
子持ちママのジレンマ解消
仕事中の黄春花さん
広東省中山市港口鎮の女性・黄春花さん(29)は、ベルトコンベヤーの上に流れて来るスピーカーを手に取り、慣れた手つきで本体の裏に操作ガイドを貼っていた。これらのスピーカーは海を渡って欧米諸国に輸送され、商業施設の商品棚に並べられることになる。
黄さんの月給は約4000元(1元は約20円)。勤務時間は自由が利き、いつでも休みを取ることもできるという。休んだ時は、オールラウンドをカバーできる従業員が代わりに働き、休んだ分をその月の別の時間帯で埋め合わせをするかは自分で決めることができる。
そのため、黄さんは子供の送り迎えの時間と、仕事の時間が重なり、ジレンマを感じることもなくなった。そして何より注目すべき点は、彼女の受け取るべき給料や福利厚生が全く影響を受けていない点だ。
中山市では、女性が仕事と育児を両立できるフレックスタイム制の仕事を、「ママポスト」という親しみやすい名で呼んでいる。
黄さんが働いている会社には、「ママポスト」で働く女性が236人おり、第一線で働く従業員の約3分の1を占めている。中山市全域を見ると、企業約160社が「ママポスト」を設置し、4000人以上がそのポストで働いており、さらにその人数は増加の一途をたどっている。
広東省仏山市では、ECや貿易、工業・生産、家事代行サービスなどの企業約250社が「ママポスト」を開設しており、子供を持つ女性3200人以上に雇用機会を提供している。
フレックスタイム制を導入できたのはなぜ?
黄さんや同僚は「ママポスト」で働く前、「残業や出張で家族の世話ができなかったり、仕事に専念できないため、会社に嫌がられたりしたことがある」と、なかなか仕事と家庭を両立できないジレンマを抱えていた。
その一方で、新型コロナウイルス感染拡大を背景に、地元に戻る出稼ぎ労働者が増え、人材不足に悩まされている企業も多い。そして、受注数が回復するにつれて、ため息をついている企業も多く、納品を間に合わせるために、応援で働ける人を探し回らなければならないことも多いという。
女性が子供の世話に縛られて動きが取れなくなっている一方で、企業が人材不足に悩んでいるという現状を見て、中山市婦女聯合会の余建思会長は、「女性と企業の架け橋になることはできないか?」と考え、「そのアイデアに基づいて、当聯合会は社会に『ママポスト』を導入するよう呼び掛けた」という。
2021年5月、中山市で「ママポスト」が試験的に導入された。そして、同市人力資源社会保障当局や各級の婦女聯合会が共同で、雇用機関に足を運び、一部の企業から、フレックスタイム制で雇うことができるという情報が集まり、需要と供給の情報マッチングから着手した。