貴州省のある村民委員会の建物の前に設けられたバスケットコートでは、選手たちが軽快に走り回り、パスを出し、シュートが決まると、観衆から大歓声が上がっていた。プロ並みとはいかないまでも、中国の農村で最近開催されたバスケットの試合が多くの人の心をわしづかみにし、ライブ配信の視聴者数は延べ1億人を超えただけでなく、外交部(外務省)の趙立堅報道官までもが注目して、「イイね!」を送った。新華社が報じた。
少数民族の伝統的な祝日である「吃新節」を祝うため、地元の少数民族の人々が自発的に企画した「バスケットボール大会」は、周囲の村から集まったたくさんの人々が観戦し、その熱気にあふれる様子がネットで瞬く間に話題となり、幅広い人気を集めた。農村に作られたバスケットボールコートに、大会を企画し運営するのも村民で、参加する選手もほとんどが村民、そしてその賞品に至ってはウシやブタといった地元の農産品であったため、ネットユーザーから親しみを込めて、NBAならぬ「村BA」と名付けられた。
その盛り上がりの中、7月30日から8月2日までの4日間、貴州省「美しい農村」バスケットボールリーグ黔東南苗(ミャオ)族侗(トン)族自治州準決勝が台盤郷台盤村で開催された。試合会場では、はしごを立てたり、家の屋根に登ったり、フェンスをよじ登ったりする人まで現れるほどの超満員となり、ライブ配信の視聴者数は延べ1億人を超えた。
「村のはしごは全て売り切れ」
快晴で厳しい暑さとなった8月2日午後3時、牙さん(88)は傘をさして屋外の観客席に座り、バスケットボールの試合開始時間を待っていた。30キロ離れた凱里市からやって来た牙さんは、席を他の人に取られてしまわないように、トイレも妻と交代で行ったという。
また河南省や広西壮(チワン)族自治区からもその「名声」を聞きつけた多くの人が、この「オラが村のバスケの試合」である「村BA」を観戦しようと集まった。
試合開始のホイッスルが鳴った時には、会場は超満員で空席はゼロ。会場の外の山の斜面や屋上など、足を置くことができる所は全て観客で埋め尽くされ、村民は「村のはしごは全部売り切れたよ」と笑顔で話したほど。
一部の村民は家から鉄の鍋やタライを持ってきて、それを叩いて応援し、シュートが決まると、鉄を叩く音と大歓声で会場は大盛り上がりとなっていた。
会場の解説者は、普通話(標準中国語)や貴州の方言、ミャオ語などを交えて解説。休憩タイムになると、一転して少数民族の歌や踊りといったパフォーマンスが披露され、勝ったチームにはウシや羊、ブタ、スイカが賞品として贈られた。このように「村BA」は徹頭徹尾「オラが村」テイストに満ちている。
台盤郷政府のおおまかな統計によると、試合が開催された4日間、1試合ごとの平均観戦者数は1万5000人を超えた。会場に入れる人数には限りがあるため、会場に入れずに、外から観戦した人の数も1万人を超えた。そして、多くの人が、観戦に来たことを証明するために、会場から数十メートル離れた場所から「証拠写真」を撮影していた。
ネットユーザーからは、「3日3晩観戦したが、とても素晴らしい試合で、圧巻だった。観客は大興奮していた!」といったコメントが寄せられた。また、あるネットユーザーは、貴州の「村BA」が爆発的人気となっている原因について、「お金が関係しない試合というのは、人の心を打つ。ガチンコ勝負で、親しみを覚える」や「選手はみんな、お金のためではなく、自分の村の名誉ために戦っている」と分析している。
バスケットボール大会のために、普段は他の地域で働いている多くの若者も帰省した。
今大会を企画したのは「大会が開催されるようになって数十年になり、僕たちの世代で途絶えさせることはできない」と話す王再貴さん(26)ら、台盤郷の若者20-30人だ。王さんは退役した元軍人で、今は台江県で警務補助人員をしている。村でバスケットボール大会を開催するために、王さんわざわざ1週間の休暇を取ったという。
台盤村のバスケットボール大会の歴史はなんと1936年にまで遡ることができる。その年から、同村の村民は毎年旧暦の6月6日になると、「闘牛」や「闘鳥」といったイベントを開催し、なかでもバスケットボールは参加する人が最も多く、村民が最も好きなイベントとしてこれまで受け継がれ続けてきた。
「村BA」が爆発的人気となっているのは、少数民族が歴史を受け継ぎ、バスケットボールが人気スポーツとなっているからであるほか、農村地域でも、質の高い精神文化を追求する生活を送りたいと強く願っていることの現れでもある。近年、貧困脱却の難関攻略の成果がさらに強化され、農村振興が継続的に推し進められているのを背景に、一般庶民が大きな実益を享受し、物質的生活の水準も向上し、スポーツや文化活動に参加する気持ちや金銭的余裕ができている。(編集KN)
「人民網日本語版」2022年8月16日