中国では果物の栽培面積が増加し続けるのにともなって、生産量も持続的に上昇している。データによれば、中国の果物生産量は2012年の2億2100万tから21年は2億9300万tに増加し、1人あたり年間消費量は17年の150.93kgから21年は175.27 kgに増えて世界一になった。
山盛りのフルーツは、今ではそれほどぜいたくなものではなくなった。その背後には数え切れない人々の努力があり、数多くの画期的な技術もあり、大規模応用を実現した農業用ドローンもその中の1つだ。
「世界のオレンジのふるさと」と呼ばれる江西省贛州市信豊県では、現地の果物農家が「柑橘類などの果物は水稲や小麦のような大規模栽培の作物よりはるかに手がかかる。こまめに世話をしないと傷んで商品にならないか収穫ゼロになることさえある。ここの特産品はネーブルオレンジで、育つまで270日間かかり、作業のうち管理や保護に当てられる時間が6割を超える」と話した。
しかし現在、従来の果樹園管理モデルが挑戦に直面している。農村人口の減少とますます深刻化する高齢化の上に、夏の暑い気候の中での作業に体力がもたない。人手不足により産業の消滅をもたらすではないかと心配する農家がいる。
さらに果樹園は機械化が難しいということがある。穀物を栽培する場所を確保するため、中国では果樹園は山間地にあることが多く、地形が複雑で、小型トラックも入れない。
空を飛び、フレキシブルな使い方のできる農業用ドローンは、こうした難局を乗り越えるカギになった。大疆(DJI)の農業用ドローン「雲上疆果」プロジェクト第1期モデル園のオーナーの劉さんは、「うちの10ヘクタールの畑は、人の手で農薬を散布すると10人で2日かかり、誰かが休みを取ると3日かかっていた。だが夏の南方は雨が多く、気温が高く、農薬を散布できる期間が短い。試しに大疆の農業用ドーンを使ってみたところ、すべての作業が3時間で終わり、これなら毎年人件費を約5万4000元(1元は約19. 7円)節約でき、農薬そのもののコストは4500元から2500元になり、水の使用量も90%減らせて、合わせると少なくとも12万元のコストカットになることがわかった」と話した。
中国農業大学の何雄奎教授は、「ドローンから発生する強い気流により農薬の浸透力が一層高まり、温度と湿度がより適切な夜間に作業することが可能になり、駆除の効果も上がる。同時に、水と農薬の利用効率が大幅に向上し、従来のやり方のように農薬の60%が土に流れ込むということがなくなり、農薬の大量消費と農薬による大量汚染を避けることができる」と説明した。
ネーブル栽培の専門家の袁守根氏は、「農業をより手軽なものにし、コストを引き下げて効果を高めたのは、ドローンが果樹園にもたらしたメリットの1つに過ぎない。人手による農薬散布では統合的な病虫害対策が行えず、作業の進度も農家によってばらばらで、病害虫が隣の畑に逃げ込み、生き残ったものが農薬への耐性を獲得し、駆除がさらに難しくなるということがあった。ドローンなら大規模な対策が可能で、この難問を解決できる」と話した。
大疆の農業用ドローンは農薬散布だけでなく、果樹園での果物や苗の輸送、果樹園3Dモデリング、果樹の生育状況のモニタリング、果物の生産量の予測などにも用いられている。農家の中には、「ドローンから発生する気流で花をゆすり、咲き終わった花びらを果樹から吹き飛ばすことができ、灰色カビ病の予防になる」と話す人もいる。一方で、大疆の張暁楠シニア企業戦略ディレクターは、「第一線のユーザーが生み出した農業用ドローンの多彩な使い道は、私たちの予想を超えている」と話した。
大疆の農業用ドローンは中国全土の複数の果樹生産地域で大規模な応用を実現し、果物の種類は20種類を超え、広西壮(チワン)族自治区の砂糖橘(ミニミカン)や沃柑(柑橘類の一種)の栽培地域、広東省のリュウガンの栽培地域、海南省のマンゴやドラゴンフルーツの栽培地域でも活躍している。(編集KS)
「人民網日本語版」2023年3月9日