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西側世界にはコーヒー文化の長い伝統がある。早くも18世紀のフランス・パリの街には300軒以上のカフェがあったという。
一方、現在の中国大陸部では多くの人がコーヒーについて体系的に認識するようになったのは、およそ1980年代以降だった。米国のスターバックスや香港のお茶レストランの中国大陸への進出から、現在の国内生まれのコーヒー新勢力まで、現地化を遂げたカフェがより多くなり、人々のライフスタイルを少しずつ変えている。中国人自身のコーヒー様式がゆっくりと形成され、中国独自のコーヒー文化が育まれている。
北京のカフェオーナーの張一芃さんはコーヒーについて、「中国はこれまでずっと茶文化が中心の国だったので、コーヒーを飲む時に、何か一定の決まりがなければならないということはなかった。自分はコーヒーが好きだが、コーヒーの香りや味わいにこだわりすぎることはない。数多くの香り・味わいの中から、自分にぴったり合うものを見つけるあの感覚こそが、コーヒーのあるべき姿だと思う」と話した。
2021年4月、瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)の大人気商品となった「ココナツラテ」が登場し、ドリップコーヒー業界全体の売り上げを伸ばしただけでなく、中国の消費者はコーヒーを飲み慣れないのではなく、「西洋式」のコーヒーに慣れないだけで、中国人は中国現地化したテイストのコーヒーを求めているのだということをよりはっきりと証明した。コーヒーの酸味と苦味を味わう欧米の消費者と異なり、中国の消費者はコーヒーとミルク、ココナツジュースが一体となった豊富な味わいをより好んでいる。
現在、中国の消費者がコーヒーに求めるものは頭をスッキリさせるといった副次的なものから、コーヒーの味そのものへと回帰している。23年3月、ラッキンコーヒーは世界中でコーヒー豆を探し求めるようになり、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)優勝者のアンソニー・ダグラスさんが率いるチームのコーヒー豆バイヤーが、コーヒー豆生産の第一線に直接出向いて豆を仕入れるようになった。このことは供給源から品質をコントロールし、中国の消費者の口に合うコーヒー豆を選ぶ上でプラスになり、またグローバル産業チェーンにおける競争力を構築する上でもプラスだ。
パナマのコーヒー豆は価格が高く、生産量が少ないため、大衆的コーヒーブランドにとってこれまでは高嶺の花だった。しかしラッキンコーヒーはパナマ産コーヒーを自社にとっての重要なステップであると考えている。そこでダグラス氏とラッキンコーヒーのバリスタがコーヒー農場を訪れ、工場を視察するなどして、高品質のコーヒー供給源と接触し、仕入れルートの開拓を進めている。
ラッキンコーヒーはエチオピアで展開しているモデルはさらに一歩進んでいる。アフリカ大陸のエチオピアはコーヒーの主要生産地で、標高が2000メートル前後あり、昼夜の温度差が大きいことから、コーヒー豆の甘みが強くなり、高山地帯の肥沃な土壌がその栄養価を高めている。今年5月には、ラッキンコーヒーのエチオピア事務所が設立された。
コーヒーチェーンにとっても、独立系のニッチなブランドにとっても、品質が競争で勝利する要因になる。こうしたことを直接示しているのは、最高級コーヒーのゲイシャのコモディティ化(市場価格の低下)だ。ゲイシャは「伝説のコーヒー豆」と呼ばれ、独特な風味と生産量の少なさから、2019年にはコーヒー豆コンテストで1ポンド(450グラム)1029ドル(1ドルは約140.5円)というの驚くべき高値をつけたが、今年6月初めにラッキンコーヒーの厦門(アモイ)中山路旗艦店では異なる産地のハンドドリップ・ゲイシャコーヒー3種類がわずか20元(1元は約19.6円)で販売された。
ここから予測できるのは、将来は高品質のコーヒーが本当に一般庶民の手に届く可能性があること、中国のコーヒー産業も品質を競い合う時代に突入することだ。
今、形成されつつある中国式のコーヒー文化について、三頓半珈琲の創業者の呉駿さんは、「将来はより深みを増した広がりとより多くの可能性が備わり、急速に発展する社会のプロセスの中、ぶつかり合うことでより多くの新しい味わい、スタイル、楽しみ方、そして新しい消費習慣が生まれることになるだろう」との見方を示した。(編集KS)
「人民網日本語版」2023年6月15日