北京在住20年の英国人「中国生活に100%満足」 (2)
2006年、雑誌「THE BEIJINGER」が選ぶ「2006年もっともクールなもの」に、ドミニックさんの会社がランクインした。その後間もなくして、1カ月の売り上げが6万元(約76万4千円)を突破した。北京の伝統家屋、四合院が並ぶ庶民の横町「胡同(フートン)」を舞台にファッションショーを催し、住民委員会のオバサン達に、店頭で中国伝統の「秧歌」(ヤンコ踊り)を踊ってもらった。こうして、ドミニックさんは南鑼鼓巷で大儲けした。
北京で水を得た魚の如く活躍する外国人は、だんだんと、メディアや市民の関心を呼び起こした。メディア取材、大学での講演、テレビ番組へのゲスト出演などを通じて、ドミニックさんは、北京さらには中国全国で、「有名な外国人」となった。
「『大雑院』(数世帯が一緒に暮らす四合院)に住んで8年になる。北京の生活がこんなに素晴らしいとは、誰も想像できないだろう。子供はあちこちの家庭でご飯をご馳走になり、周りは心温かいご近所さんばかりだ。自分の店を持ち、胡同の文化に常に触れる暮らしの中で、互いに親密で、お互いに関心を持ち、好意や親切でつながるこのような人同士の関係を、私は非常に気に入っている」とドミニックさんは話す。
ドミニックさんが今、最も頭を悩ませているのは、子供の教育問題という。「中国の教育は、大変実用的だ。多くのことをしっかりと記憶させる教育だが、『なぜそうなるのか』ということを教えない。思考力の育成がおざなりになっている」。中学校に通うドミニックさんの長女は、どの科目でも試験の成績は90点以上、英国の評価ではAに相当する。だが、週末に家族揃って遊びに出かけても、彼女は常に宿題のことを気にしている。
娘の態度に、ドミニックさんは大変腹が立ち、「パパは、お前がBを取ってきても全く構わない。休みの日にも宿題のことを考えることはない。もっとリラックスして、自由に遊びなさい」と本人に話した。ドミニックさんは、娘がプレッシャーを感じ、帰宅後3時間もかけて宿題をこなし、週末にさまざまな補習クラスに通う必要はないと考えている。子供達が心身ともに健康にすくすくと育ち、自分のやりたいことを思う存分やることを、ドミニックさん夫妻は心から望んでいる。