昨年、中国へのJICAボランティア派遣が30周年を迎えました。私と中国の出会いは20数年前です。山西省太原で中国語を学んだあと安徽省合肥に移り、JICAボランティアではありませんが、日本語教師として旅行ガイド日本語クラスの学生と2年間を過ごし中国をいったん離れました。当時JICAの活動を知った私は、再びJICAボランティアとして中国に戻ろうと考えていました。その思いがやっと二十数年後に実現することとなったのです。ただ、JICAシニアボランティアの日本語教師として、学校ではなく教科書の出版社に派遣されました。配属先は人民教育出版社(以下,人教社)、中国でのスタンダード日本語教材『中日交流標準日本語』(以下,『標日』)の出版元です。『標日』は私が初めて手にした日本語教材でした。1990年代前半、まさか将来その教材出版元で仕事をするなんて夢にも思わず、その『標日』をテキストとして開講していたテレビ日本語講座を見ていたのです。
人教社では、JICAボランティアとして2年にわたり中国の中等教育の教材編集に携わりました。赴任当初、自分に何がどこまでできるのか不安を感じながら仕事をしていましたが、周囲の方々、編集室の方のアドバイスや励ましを受けながら、派遣されたからには少しでも、中国の中等日本語教育のレベルアップに貢献できるようにと模索を始めました。そして、教科書編集や教材作成、中国の中等日本語教育に対する理解を少しずつ進め、全国中等日本語教育教師研修会に参加し、人教社の日本語編集室での業務を行ってきました。
2年という短い時間ではありましたが、中等日本語教育という公教育に関わる仕事に少しでも役に立つことができたのなら、とてもうれしいです。公教育について、ある先生が「…公教育というものは、…その国の方々が次世代へ託す夢の中味と深い関係があります」とおっしゃいました。そんな事業に私が携わっているのかと思うと幸せを感じると同時に重い責任も感じながら仕事をしていました。中国の現世代の人々が次世代に伝えたい大切なこととは何なのだろうかと、私も考えながらです。
教科書編集はとても地道な作業です。また、たった2年で完成する作業ではありません。特に外国語教材ですから、一つひとつの言葉に細心の注意を払いながら、項目や内容、全体の構成から授業での使用方法まで考えなければなりません。もちろん一人でできることではありません。“協働”作業で、少しずつ教科書を作り上げていきます。その作業は、その教科書を使って日本語を勉強する生徒たちのことを想像しながらの作業であり、とても楽しいものでもあります。生徒たちがこの教科書で日本語を学び、日本と中国について理解を深め、日本語学習を通して様々なことを学んでくれるのかと思うと、日本語教師としても編集者としてもとても意義深い仕事だと思っています。
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