日本ドラマファンなら必ず「黒革の手帖」を知っているだろう。2004年、女優の米倉凉子は同作品にヒロインの原口元子役で出演し、大ブレイクした。そして、銀座のクラブのママとして男を翻弄する「悪女」のイメージを、日本ドラマファンの心に植え付けた。今年の夏、その「黒革の手帖」が再びドラマ化され、元子役を武井咲が、議員秘書・安島富夫を江口洋介が演じている。(文:張禎希。文匯報掲載)
「黒革の手帖」は日本文芸界の不朽の名作。原作の長編小説の作者は、日本の推理小説界の「三大巨匠」の一人である松本清張で、没後25周年を記念して、今年再びドラマ化された。1982年からこれまでに計6度ドラマ化され、各時代に合わせた「元子」が描かれてきた。
1970年代末から連載が始まったこの作品が、今でも多くの人の心を打つのはなぜなのだろう?ドラマ化されるたびに、毎回少しの変化があるが、各時代の声をどのように反映させているのだろう?
女性の命題「自分の野望とどう付き合うか」
ドラマをおもしろくしているのは、松本清張の原作のすばらしい設定。40年以上たった今も、そのストーリーが人の心を打つのは、各時代の日本の女性が遭遇する問題や多くの女性が感じている「自分の野望とどのように向き合い、処理すればいいのか」という葛藤を絶妙に表現しているからだ。
「黒革の手帖」において、元子の野望は、銀座一のクラブを持ち、権力とお金を手に入れることだ。実際には、日本ドラマでは、「野望」はモラルに欠けた暗い話題ではなくなっている。昨年大ヒットしたドラマ「東京女子図鑑」は、現代の人々の普遍的な野望を表現している。主人公の綾は、典型的な物質主義の女性で、田舎に生まれた彼女は子供のころから大都市の派手な生活にあこがれていた。そして、上京した当初は三軒茶屋に住み、そこから住む場所を少しずつ銀座へと移動させ、住む場所や富で、人生の成功の度合いを測る。
このような以前なら心のうちに隠していた「野望」が、この2作品では、モラルに欠けているものとして批判したりはせず、その代価を示し、良い意味で考えさせられる内容となっている。華やかな生活にあこがれる綾は、常に物質とお金で社会的地位を向上させ、自分よりお金の無い人を見下げずにはいられない。しかし、彼女自身も他の人に見下されてきた「被害者」で、お金持ちの家に生まれてきた友達たちに認められることは永遠にない。一方、「黒革の手帖」の元子は、自分の野望を実現させるために、本当の愛、ぬくもりさえもあきらめる。
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