笑い声の中で悲しい物語を描くのが喜劇
記者:山田監督は誰もが認める「ポスト小津安二郎」。このような評価についてどう感じているか?
山田監督:そのように評価されて本当に光栄に思う。しかし、私が若かった頃は、小津監督のような映画は絶対に作らないとずっと思っていた。ところが、年齢を重ねるにつれ、小津監督の映画の長所が少しずつ分かってきた。小津監督と黒澤明監督は私の師匠。そのため、「東京物語」のリメイク版を作れたのは本当に光栄なこと。
記者:喜劇をずっと得意としてこられたが、社会の発展、疎遠になる家族関係、死なども山田監督の作品のテーマ。どうしてこれらのテーマを喜劇で表現しようと思ったのか?
山田監督:映画界では、昔からずっと、「喜劇を作る際に最も大切なのは悲劇」と言われてきた。笑い声の中で悲しい物語を描くというのが喜劇だと、私は思っている。
記者:「家族」をテーマにした作品を長年作ってこられたが、各時代、人と家族との関係はどのように変わってきたか?そのような変化を、どのように映画を通して描いているのか?
山田監督:日本人が100年以上かけて構築してきた生活、文化が今、知らず知らずのうちに崩壊してきている。今の家庭生活において、何を否定し、何を守らなければならないのか、日本人は真剣に考えなければならない。これは、日本の政治にとっても、大きな課題となっているはずだ。私は危機感を抱いており、このような状況が今後も続けば、日本人は不幸になってしまうと思う。
記者:山田監督の作品は、日本では大人気となっているが、中国人は、平凡な生活を描く映画を、お金を払って映画館で見るということにまだ抵抗があり、中国の映画館でも家庭の生活をテーマにした映画が上映されたことがずっとない。このようなジャンルの映画はどのようにPRすればいいと思っているか?
山田監督:中国では、家庭や生活のすばらしさを細かく描き、魅力が詰まっている映画を作るべきだ。日本には、小津監督を代表とし、成瀬巳喜男監督、清水宏監督など家族生活をリアルに表現することを得意とする先輩たちがいる。彼らの作品の中ではヒーローは登場しない。私もヒーローには全く関心がない。逆に、貧乏臭く、哀れで、みんなにバカにされている男性を主人公にするのが好き。それは「アンチヒーロー」と言えるのかもしれないが、その最も代表的なものが中国文学に存在している。それは、中国の作家・魯迅の「阿Q正伝」だ。(編集KN)
「人民網日本語版」2017年5月18日
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