数年前、日本企業の日本国内回帰の動きが注目を集めた。そして最近になり、日本企業が日本国内での生産能力を拡大させたり、海外の工場を閉鎖したり、海外生産を削減したりしているというニュースが時々流れたことで、この話題が再び注目を集めるようになっている。経済参考報が伝えた。
日用品メーカーの「ライオン」は昨年末、香川県に虫歯予防効果などをうたった高付加価値の歯磨き粉を生産する新工場を建設すると発表した。2021年の稼働を目指し、年間約1億3000万本の生産を予定している。また、兵庫県の洗口液の新工場も稼働予定だ。化粧品メーカーの資生堂も2月、福岡県久留米市に新工場を建設し、2021年の稼働を目指すと発表した。
また、資生堂は栃木県と大阪府で新工場を建設しており、完成した暁には、日本国内に工場6ヶ所を所有することになる。コーセーも日本国内工場への資金投入を強化しており、群馬工場の生産能力を3割強化した。衛生用品大手のユニ・チャームは紙おむつを生産する福岡の新工場を3月下旬から稼働させている。インスタントラーメン大手の日清食品も関西工場の第3期工事が急ピッチで進められている。
日用品メーカーのほか、カメラと事務機器メーカーのキヤノンが宮崎県で建設しているデジカメ工場も今夏に稼働する予定だ。今年2月、自動車メーカー・ホンダは2021年に英国とトルコの工場を閉鎖すると発表した。そして、日産も3月に、海外で展開する高級車「インフィニティ」の英国での生産を今年半ばまでにやめると発表し、さらに、スポーツ多目的車(SUV)「エクストレイル」の次期モデルを英国で生産する計画も取りやめると発表した。このように自動車メーカー2社は、生産を日本に回帰させることを決定している。
数年前、日本企業が工場を日本国内に回帰させていた主な原因は、新興市場の最低賃金基準が上がり、人件費が高騰したため、海外で生産するコスト的メリットがなくなったからだった。一方で、近年は、日本の中央銀行が超金融緩和政策を実施し、円安の状態が続いている。資本運営という観点から見ると、企業が海外に投資するメリットが弱まると同時に、円安のため日本で生産した製品の輸出には追い風となり、企業が日本での生産を強化する原因となっている。さらに、日本政府は地方経済振興政策を打ち出しており、企業に対して、海外や日本の三大都市圏にある本社や工場を中小都市に移すよう奨励している。
こうした要素のほか、日本企業の国内回帰ラッシュには以下の4つの原因もある。
第1に、新興市場の消費能力が継続的に向上し、高品質で、安全、かつ信頼できる「メイド・イン・ジャパン」が新興市場の消費者の間で人気になっている点。日本企業の国内回帰は、コストだけを考えた策ではなく、先端商品の需要が高まる市場の流れに順応し、日本国内の技術研究開発能力や管理能力を十分に活用し、「メイド・イン・ジャパン」というブランドのメリットを最大限発揮させようと狙っている。
第2に、日本が観光立国を推進し、インバウンドが急速に発展し、訪日外国人観光客の日本におけるショッピングが日本国内の消費市場拡大を牽引している点。2017年、外国人観光客の日本における消費額は12年の4.1倍に増加した。そして、2018年にはその額が4兆5000億円に達し、そのうちショッピングが34.7%を占めた。日本は2020年までに外国人観光客を4000万人に、消費額を8兆円にすることを目標としている。