中国映画市場では「アベンジャーズ/エンドゲーム」の勢いがなお続き、ダークホース的な興行成績を上げている「存在のない子供たち」も興行収入3億元(1元は約16.0円)に向かって突き進み、「ローマ」や「半辺天」などの芸術系作品も相次いで公開されたが、これらのいずれもピカチュウの可愛さに負けを喫している。先週金曜日から世界的にも有名なキャラクター・ポケットモンスターのゲームを実写映画化した「名探偵ピカチュウ」の公開が始まると、3日連続で当日の興行収入の半分以上をかっさらい、「アベンジャーズ」をトップの座から引きずり下ろし、可愛さで観客の心をわしづかみにした。「北京日報」が伝えた。
▽ピカチュウの可愛さが観客の心をわしづかみ
「Mr.インクレディブル」と「ミニオンズ」に続き、「名探偵ピカチュウ」は「可愛さは正義」というこの世のルールを改めて証明してみせた。映画の中のピカチュウは米スーパーヒーローキャラクター「デッドプール」の中年男性の声でしゃべるが、多くの観客は毛がふさふさした外観、丸っこい頭、稲妻の形をしたしっぽを見て、思わず「可愛い!」と驚きの声を上げる。この可愛いさのパワーで10日の公開初日には興行収入が7497万元に達して、大陸部のトップになり、興行収入全体のうち56.1%を占めて、「アベンジャーズ」の16日連続首位の記録をストップさせた。12日午後5時現在、累計興行収入は2億5800万元に達し、オンライン映画チケット販売大手・猫眼微影は、「最終的に6億元に到達する」と予想している。
「アベンジャーズ」とレバノンの感動的な作品「存在のない子供たち」は公開からだいぶ経つが、まだその勢いは続いている。「アベンジャーズ」は先ごろ興行収入が40億元の大台を突破したが、大ヒットした「流浪地球(The Wandering Earth)」を追い越すのは難しいとみられている。「存在のない子供たち」は口コミで非常に評判が高く、累計興行収入は2億3500万元に達した。先週金曜日公開の「ローマ」や「半辺天」などの文芸路線は興行収入という点ではまったく振るわず、最高の「ローマ」でも300万元に達していない。
北京市の広安門電影院の張■市場マネージャー(■は品の口が水)は、「『名探偵ピカチュウ』が最も好調な原因は特撮効果の素晴らしさにあり、ポケモンたちの高いリアリティは、関連グッズのブーム到来を確信させる。『存在のない子供たち』は『アベンジャーズ』の隙を突いて生まれたダークホースで、勢いは相当なものがある」としている。
▽可愛さ以外は特に語るべきものなしとのコメントも
様々な姿かたちのポケモンが次々登場し、多くの観客が子供の頃に見た二次元のマンガやアニメのイメージが、映画の中で立体的なキャラクターとして動き回っている。この卓越したキャラクターデザインこそ、「名探偵ピカチュウ」が大人から子供まで大勢の観客を獲得した大きな原因だ。
映画評論家の燕山刀客さんは、「ピカチュウというキャラクターが世界を席巻して数十年の間に、アニメ、ゲーム、玩具などどれも好調な売れ行きで、ないのは実写版の映画だけだったので、この『名探偵ピカチュウ』は空白を埋めたものといえる。映画は原作の雰囲気をしっかりつかんで、仮想と現実が混じり合い、生き生きとした実写版ポケモンの世界を作り出した。ピカチュウだけでなく、コダックなどのポケモンのデザインも非常に可愛らしく、大勢の女性観客は可愛いと思う気持ちを抑えられないだろう。(制作会社の)米映画会社レジェンダリー・ピクチャーズは今回は以前の『ウォークラフト』のようにゲームの映画化で大失敗するということにはならなかった。少なくとも100分間という限られた時間内でポケモンの世界観をよく伝えている」と述べた。
しかし可愛さ以外に、この映画には特に語るべきところはなく、子供向けのストーリーには粗さが目立つ。あるネットユーザーは、「この映画は最初から最後まで、ポケモンがメインのストーリーのスパイスになり、背景になっているだけの作品で、全体としてものすごくちゃちだ。始まってから10分でポケモンのゲームについて駆け足で説明するが、その後のストーリーはゲームの設定とは何の関係もない。ライムシティに行くくだりは(ディズニー映画の)『ズートピア』にそっくり。『名探偵ピカチュウ』はフィルム・ノワールのムードをたたえた探偵ストーリーで、ディストピアの陰謀の世界とみんながよく知っている可愛いキャラクターを一つに集めようとしたのだろうが、結果的にどの部分も語るべきものはない」とバッサリ切り捨てている。