数年前のヒューゴー賞受賞後、著名なSF作家である劉慈欣さんの小説「三体」の版権が人気となり、この作品を原作にしたさまざまな作品が相次いで生まれた。19日、「三体」がテレビドラマ化されるというニュースが人気検索ワードランキング入りし、「三体」は再び広く注目を集めた。中国新聞網が伝えた。
「ヒューゴー賞」受賞から約4年が経った今も、「三体」ブームは冷めていない。
今年2月と4月、「三体」シリーズ作品は2度にわたって書籍専門サイト「開巻」のフィクション類ベストセラーランキングでトップ3を独占した。このランキングの5月の最新データによると、同シリーズ作品は依然としてトップ5のうち三つを占めている。
SF文学が「ニッチ」からメジャーへ
確かに、ここ数年の書籍市場では、ほかのSF文学作品も書籍販売業者から比較的人気となっている。
ある出版業界関係者によると、SF文学作品はずっと出版されていたがいまひとつ盛り上がりに欠け、カテゴリーもそう多くなかったが、劉さんが「ヒューゴー賞」を受賞してからは、この分野の書籍出版数が確かに増えていると感じるようになったという。
「それに加えて、『流浪地球(The Wandering Earth)』がヒットし、SF文学に対する注目度が一気に上がった。読者の閲読意向も高まり、出版社もこれ幸いとこのブームに便乗し、ニーズを満足させようとしている」とこの業界関係者は分析する。
「新民晩報」も以前、十数年前には「Galactic Empire(中国語タイトル:銀河帝国)」は単本としてわずか2000冊しか売れなかったのと比べると、近年はSF分野でしばしば10万部クラスを超える超級のベストセラーが誕生し、多くの最新SF作品はいち早く輸入出版されて、国外とほとんど同じタイミングで出版できるようになった、と報じていた。
もともと「ニッチ」だったSF文学は、ある種の変化を遂げつつあり、徐々にメジャーになってきているようだ。
「SF文学ブーム」は到来したのか?
しかし「SF文学ブーム」が到来したという言い方は正しいのだろうか?
著名なSF作家の王晋康さんは、「映画『流浪地球』のヒットがSF文学をけん引した」と指摘する。王さんは最近のSF文学のブームについて、「映画は大衆向けのもので、映画が飛躍的に伸びればきっとSF文学にも恩恵が行くはずで、SF文学も盛り上がりを見せるだろう」と語った。
SF作家の陳楸帆さんは、「現在のSF文学に対する注目度は確かに上がったが、盲目的に楽観視することはできない」との見方を示す。陳さんによると、SF文学ブームが来ているとは限らないという。資本投入であれ作品出版であれ、注目されているのは大きな賞を受賞した作家であり、それでほかの多くの若手作家たちの出版ルートが増えるということではない。
「三体芸術挿画集」の序言で、劉慈欣さんは「今回多くのすばらしい画家が画集の創作に加わってくれたことを非常にうれしく思う。小説『三体』が長い道のりのスタート地点となることを願っている」と記した。
もしかしたら、この言葉はSF文学の発展について使うべきかもしれない。王晋康さんは、中国のSF文学は世界のSF文学界でやっていけるだけの実力を備えたが、残念なことに作家の数が少なく、作品の数量も不足しており、特に「三体」のような名作長編小説は少ないと指摘し、「依然として努力が必要だ」と語った。 (編集AK)
「人民網日本語版」2019年6月21日