「高考」(中国大学統一入試)は特殊な通過儀礼だと言える。6月8日午後、高考の最終試験科目終了後、試験会場となった安徽省合肥市の合肥十中の校門から受験生たちが次々と出て来た。黄色いTシャツを着た背の高いある若者が人込みに向かってまっすぐに歩いて来ると、突然母親の前に跪き、大きな声で「お母さん、ありがとうございます!何年もご苦労をかけました」と感謝の言葉を述べた。それを見た母親は両手で息子の頭を抱きかかえ、涙を流し始めた。
この一幕を近所に住む撮影愛好家が撮影。周囲の多くの保護者たちも涙を流している様子に、ネットユーザーたちも「画面越しに見ても感動的だ」との声を次々と寄せている。
試験会場の外で跪いて母親に感謝した若者は合肥168中学高等部16班の王恒傑さん。王さんの母親は息子が跪いた瞬間、あまりに突然に訪れた幸福で頭の中が真っ白になり、思わず涙があふれてきてしまったという。
王さんの母親は多くの保護者と同じように、子供の勉学に付き添ってきた。息子が高校2年から、彼女は自身の衣料関係の商売をやめ、学校の近くに部屋を借りて息子の付き添いに専念した。彼女はそれまでまったく料理ができなかったが、付き添いを初めてからは料理を覚えただけでなく、あれこれとメニューを変えて作ってやれるようになった。王さんの母親は、「付き添いの生活は大変だったが、幸せでもあった。子供が大学に上がったら、自分のことが中心の生活になっていく。だから息子と一緒にいられる時間をことのほか大事にしてきた。疲れても、大変でも、その価値はあった」と語った。
北京青年報はこの件について、「突然跪いたこの若者の行為は人の心を揺さぶった。一見するとありふれた行為に思えるが、自意識が極めて強烈な時期にあるこの年頃の若者が跪いて感謝するという行動に出るまでには、内心の葛藤があったことは想像に難くない。驚天動地の出来事とまでは言えないかもしれないが、多くの人が集まる公の場でこのような行為をしたことは、人の心を揺さぶるに十分だ。その意味で言うと、間違いなく最も活き活きとした『恩義に感謝する授業』になったと言えるだろう。高考は終わったが、人生には常に試験がつきまとう。今回の『追加試験』は満点だったと言っていいだろう。もちろん、両親への感謝は必ずしも跪いて行う必要はない。いかにして心の中にある愛を大きな声で伝えるかがカギとなる。感謝する心は幸福を得るための源であり、感謝の心を常に持ち、心の中に仁愛と感謝の種をまけば、豊かな品性と徳、そして奮い立ち前進する人生を手にすることができるだろう」と評した。(編集AK)
「人民網日本語版」2019年6月11日