観光客がこれほど多い理由として、国内の観光地がやや不足していることが考えられる。「2018年文化と観光発展統計公報」によると、2018年末時点で、全国のA級景勝地は1万1924ヶ所、年間受入者総数は延べ60億2400万人だった。だが、これら約1万1千ヶ所あまりのA級景勝地のうち、5A級景勝地は約250ヶ所にとどまっている。観光客にしてみれば、面白そうな場所に行きたいのは当然のことなので、旅行者が集中するシーズンには、特に優れた景勝地に普段にも増して観光客がどっと押し寄せるという矛盾を抱えることになる。
10月2日夜、上海外灘中心エリアでは、ピーク時には観光客が7万1千人に達したほど(撮影・殷立勤)。
観光地の不足だけでなく、休暇が不足していることも、観光地が「人・人・人」で溢れかえる主な原因となっている。観光客は誰でも、大型連休は旅行者数が多く、道路が混雑することを知っているのに、どうしてわざわざこの時期を選んで旅行に出るのだろうか?その最大の原因は、実際には有給休暇を取得しづらいことにある。休暇の取得は認められているものの、実際には休みづらく、よってピークを避けた旅行を実現しづらく、混雑の波に呑まれて旅行に出るしか方法はない、といった具合だ。
人社部が実施した一部都市(60都市)を対象とした人力資源・社会保障の基本状況をめぐる調査によると、労働者の半数あまりは、有給休暇を付与されている。つまり、5割近くは、有給休暇を与えられていないことになる。
中国社会科学院観光研究センターが全国2552人の労働者を対象に実施した調査によると、回答者の40.1%は、「年次有給休暇を付与されていない」と答え、「有給休暇を付与されているが、実際に休めない」は4.1%、「有給休暇を付与されており、実際に取得できるが、自分で休暇を取る日を決めることはできない」は18.8%。一方、「有給休暇を付与されており、実施に取得できる。かつ、自分で休暇を取る日を決めることができる」人の割合は31.3%にとどまった。
(資料写真、撮影・湛超越)