昨年には北京の三里屯で、布靴の老舗・北京内聯昇靴業有限公司がポップアップストアを開設した。
「咸豊三年」、「老仏爺」、「布靴ファン」……中国情緒あふれる短いフレーズが暗いところで浮かび上がる蛍光ライトやおしゃれな背景ボードが、ばっちりメークをした若い女性たちを引き寄せ、彼女たちは次々にやってきてはここで記念撮影をする。
微博(ウェイボー)アカウント「内聯昇靴店」によれば、このポップアップストアにはオープン初日に1万人を超える客が訪れた。それだけでなく、内聯昇はここ2年ほどは有名デザイナーとコラボしてファッションウィークにも参入し、スターと一緒にファッション誌に登場したり、歌手のコンサートの宣伝ポスターに登場したりして、若い人々の間でどんどんファンを増やしている。
娃哈哈集団も100年の歴史を紡ぐ老舗になることを目標に掲げる。同集団の創業者で現在は会長兼社長の宗慶後氏は、「グループの管理、商品、マーケティング方法すべてで変革・イノベーションを遂げなければ、長い時間を経た会社を新しくすることはできない」との見方を示した。
ここ2年間、同集団はクロスオーバーを通じて大いに異彩を放ってきた。これまでに打ち出した業界の枠を超えたメイクパレットは、微博の関連記事閲覧回数が1億回を突破し、幅広く好評を博した商品からイノベーションを模索する娃哈哈の姿が鮮明に浮かび上がった。
新経済をしっかりつかまえる
時代の変化にともない、中心的消費層も変化し、これにともなって、消費者の「味の好み」もどんどん変わっていく。
江西財経大学経済学院の潘樺教授は、「中国の消費者は以前は年齢の分布が非常に平均的でバランスがよかったが、今は時代に変化が起きており、消費者の中でも若い消費者が主流を占めるようになった」と分析した。
老舗ブランドのイノベーションでは時代のトレンドに順応することが必要だ。北京の王府井では、多くの若者が茶葉の老舗・北京呉裕泰茶業股フン有限公司(フンはにんべんに分)の実店舗前で足を止め、列に並んで呉裕泰が販売する抹茶アイスや抹茶ミルクティを買い求める。ここ数年の間に、呉裕泰は茶葉から派生した商品をたくさん開発した。王府井の「ネットで人気の軽食」の1つのお茶味アイスクリームや、太妃ミルクティ、ピーチ・パイン・フルーツティ、抹茶バームクーヘン、抹茶クッキー、お茶味ガムなどは、若い消費層の取り込みに成功した商品たちだ。呉裕泰の趙書新会長は、「イノベーションは未来の呉裕泰の発展における基調をなしている」と述べた。
潘氏は、「呉裕泰は時代の発展に順応し、若い消費層の飲料品に対する好みの変化に合わせて革新的商品を打ち出しており、こうした商品だからこそ若い人々の心に響く『ネット人気商品』になることができた」との見方を示した。
老舗ブランドのイノベーションでは、自社の歴史がもつ価値の拡大により注意を払っている。
人々が伝統文化をますます重視するようになり、漢服や布靴などの伝統衣装を好む人がますます多くなるのにともない、内聯昇はチャンスをとらえ、「如懿伝」や「甄嬛伝」といった時代劇のキャラクターとコラボして布靴の新製品を数多く打ち出し、たくさんの消費者を取り込んだ。
内聯昇の程旭副社長はこうした動きについて、「クリエイティブグッズが新しい市場を開き、内聯昇ブランドに対する消費者の既存のイメージを変え、布靴が消費者の日常生活の一部になり、一種の新たなトレンドになった」と説明した。
北京財貿職業学院商業研究所の頼陽所長は、「多くの老舗の商品の背後には何らかの歴史的価値があり、人々はこうした製品を見ると歴史の中へ覚えず知らず引き込まれていく。布靴のような生活用品をクリエイティブグッズに変え、商品そのものが体現する歴史的価値を拡大することは、歴史的価値に基づく非常に成功したイノベーションだといえる」と分析した。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年12月4日