演説をする劉世錦氏。(写真提供:北京大学国家発展研究院)
北京大学国家発展研究院が15日第4回国家発展フォーラムを開催した。全国政治協商会議経済委員会の副主任で、中国発展研究基金会の副理事長を務める劉世錦氏はフォーラムに出席して、演説を行った。劉氏は演説の中で、「来年に中国が小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的な完成という目標を実現した後には、10年ほど時間をかけて次の目標を達成しなければならない。それは中所得層を倍にすること、あるいはさらに倍に増やすことだ」と述べた。なぜこうした目標を打ち出すのか。劉氏は主に2つの理由を挙げて説明した。
第一に、成長のニーズには一定の安定性が備わることが必要だ。いくつかの研究の結果、所得分配格差が大きく、一部の低所得層の収入が増えなければ、ニーズに断層が生まれ、ニーズの安定性はすぐに打撃を受けることになるのがわかった。この問題は私が設定したものではなく、現実に存在する問題だ。研究が示すように、昨年は自動車業界がマイナス成長になり、今年はおそらく10%前後のマイナス成長になる。中国は現在、1千人あたりの自動車が170台あまりあるが、米国は1千人に800台、欧州と日本は基本的に1千人に600台ほどで、比較してみると中国にはまだ大きな開きがある。しかし中国の現在の自動車の成長はすでに高度成長ではなく、中速成長か中低速成長だ。この2年間に成長率がこれほど大きく低下したのはなぜか。原因は多方面に及ぶと考えられる。2019年1月から6月にかけて、自動車販売量全体のうち約30%を占めた県の中心地以下の都市は、自動車販売量のマイナス成長率が最高で、マイナス20%に達した。これ以外に、10万元(1元は約15.6円)以下の自動車購入者が市場全体に占める割合は40%に迫り、この層の自動車販売量はマイナス成長率が23%と下落幅が最高だった。同時に、高級車ブランドが流れに逆らい、上昇幅は10%を超えた。これをもとに推測してみると、こうした県の中心地以下の都市で、10万元以下の車を買う低所得層が手元不如意になり、自分たちの消費ニーズを支えられなくなったことが考えられる。この結論は今はまだ不確かで、推測の域を出ない。しかし自分としては、所得分配格差が拡大すれば、確実にこれからの成長を制約することになると考えている。
第二に、社会の安定の問題だ。かつての中国では、所得格差が大きくなると、発展途上国はいわゆる中所得国のわなから抜け出し、高所得国になるのが非常に難しいと考えられていた。実際には、いわゆる「高所得社会」になっても、所得格差の大きさは同じように大きな衝突をもたらす。よって考えられるのは、所得格差は不可避であり、経済が安定したニーズをもつことができる範囲、社会が比較的安定できる範囲で保たなければならないということだ。わかりやすく言えば、中国は中所得層を倍増させ、現在の4億人前後から、10年後は8億-9億人に増やすという新たな目標を設定できないだろうか。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年12月19日