中国のGDP平均1万ドル突破で「中等所得の罠」に警戒を 

人民網日本語版 2020年01月15日16:10

国家統計局は今月にも2019年の国民経済の成績を発表する。通年の国内総生産(GDP)は100兆元(1元は約15.9円)に迫り、国民一人あたりの平均GDPは1万ドル(1ドルは約109.9円)の大台に乗る見込みだ。「経済日報」が伝えた。

平均GDPが1万ドルを突破することは、中国の国力を示すとともに、人々の暮らしがより豊かになったことも示すものだ。しかし多くの人が平均GDPは自分とは関係がないと考え、「自分は平均値や増加分の計算に入ってはいるが、実際の状況は違う」と考える人さえいる。

実際、GDPと所得は異なる概念だ。GDPは一定の期間に国内居住者が生み出した富の総和で、所得は富が分配されて個々人の手に渡ったものだ。一部の人は平均GDPの伸びと自分の実感には「温度差」があると感じるのは、主に経済発展のアンバランスと不十分さによる一部の突出した問題がまだ解決されていないことによるものだ。

北京師範大学統計学院の李■(日へんに斤)教授の分析によれば、「一方で、所得格差を生み出すさまざまな体制・メカニズムがまだ整理されていない。市場経済の環境の中では、要素に基づく分配により、人々は生産要素をどれくらいもっているか、その質が優れているかどうかによって、所得格差が生じる。労働による分配でも、労働者の能力や知識レベルの違いによって格差が生じる。また一方で、資本の蓄積が存在する状況の中では、一定期間内の所得は過去に資本を積み上げた一部の人のものになる可能性がより高い。また都市部と農村部との格差、技術の進歩といった要因も所得格差に影響する」という。

李氏は続けて、「全体として言えるのは、所得格差の問題を解決するには、やはり市場メカニズムと公共政策という2つの手段を十分に運用し、さまざまな側面から関連政策を充実させることが中心になる。しかし注意しなければならないのは、私たちは効率を過度に犠牲にしたやり方で公平さを獲得することは決してしてはならないということだ」と指摘した。

中国政策科学研究会経済政策委員会の徐洪才副会長によれば、「平均GDPと可処分所得とは2つの異なる概念だが、両者には密接な関連がある。長年にわたり、国民の所得と経済成長は基本的に同じペースを保ち、これも同じく素晴らしい成果だ。より長期的な視点に立てば、中等所得層の規模をさらに拡大し、『鉄アレイ型』の所得分配構造から『ラグビーボール型』の構造への転換を果たすことが『中等所得の罠』から抜け出すためのカギだ」という。

国務院発展研究センター資源・環境政策研究所の李佐軍副所長は、「多くの国の発展経験から明らかなように、平均GDPが一定の水準に達すると、貧富の格差はかえって拡大し、最終的に『中等所得の罠』に陥る。これは中国が非常に警戒しなくてはならないことだ。国民を中心とした発展構想を堅持するには、人々の全面的な発展を絶えず促進することが必要だ。第1に、減税・費用削減の取り組みをさらに強化し、効率と公平性の両方に配慮し、さまざまな社会的階層の所得分配を最適化する必要がある。第2に、中低所得層と困難を抱えた層への支援を引き続き強化し、彼らが生存・発展しようとする時に直面する現実的問題の解決をサポートする必要がある。第3に、引き続き国民生活を強化・改善し、教育、医療、高齢者ケアなど国民生活に関わる分野への投資を増やし、病院にかかるのが困難、就学が困難、老後の生活が困難といった国民生活の問題を適切に解決し、人々の幸福感と獲得感を増強する必要がある」との見方を示した。(編集KS)

「人民網日本語版」2020年1月15日

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