2016年に江蘇省南通市如東県に打ち上げられた深海に生息するマッコウクジラの死骸2頭のうち、「洋洋(ヤンヤン)」と名付けられたマッコウクジラが4年の時を経てこのほど「復活」を果たした。これは世界最大規模のプラスティネーション標本であるばかりでなく、プラスティネーションと呼ばれる体内の水分を合成樹脂で置き換える技術で製作された世界で初めてのマッコウクジラの標本となる。この標本は現在、遼寧省大連市で展示され、一般公開されている。科技日報が伝えた。
プラスティネーション技術チームのメンバーの一人である、成都生命奥秘博物館の呉軍館長は、「プラスティネーションの技術は、生物の組織を、生きているかのように保存できる特殊な技術で、解剖学や病理学、生物学、組織学、発生学、展覧館の展示など、多くの学科や分野に応用されている。動物の組織の中の水分や脂肪などを合成樹脂で置き換えるのがその原理で、長期保存がその目的」と説明する。
呉館長は取材に対して、「世界最先端の標本製作技術であるプラスティネーションにより、生物の外観が分かる標本を作ることができるほか、生物の内臓や筋肉などの内部構造も展示することができ、生物が進化し、環境に適応していく過程で生まれた構造的特徴を目にすることができるようになる。また、プラスティネーション標本は、無害、無臭で、触ることができ、メンテンナンスもしやすく、長期保存できるなどの特徴を備えている。理論上では、1千年以上保存できる。従来の動物の剥製は、1年に少なくとも1-2回メンテナンスしなければ、虫が湧いたり、腐敗したりしてしまう。しかし、プラスティネーション標本なら、ほこりを拭くだけでいい」と説明した。
今回、「洋洋」のプラスティネーション標本の製作に携わったチームは、約20年の標本製作経験を誇るものの、全長14.88メートルで、重さはゾウ10頭分に相当する40トンと、巨大なマッコウクジラの標本製作は、未曾有のプロジェクトとなった。
呉館長は、「製作チームがまず直面しなければならなかった難題は、『クジラの爆発』だ。ほとんどの人は、クジラには爆発する危険があることを知らないだろう。爆発は、クジラの死後、組織や器官の腐敗により死体内部にメタンガスや硫化水素などが蓄積して膨脹し、破裂する現象だ。もし、死体の処理の方法を間違えると、爆発が起きる可能性が極めて高い。もし、爆発が起きてしまったら、プラスティネーション標本を作るプロジェクトは水の泡と消える」と難しさを説明した。
「洋洋」の体内に蓄積している気体の正確な位置を知るために、製作チームは自作のチューブを体内に入れた。あまり深くまで入れると内臓を傷つけてしまうし、浅すぎると気体が出てこない。そのため、できるだけクジラの皮膚を傷つけないようにしながら、いろいろと試した。最終的に、製作チームはまる1日かけて作業し、深夜になってやっと、体内から汽車の汽笛のような音がして、「洋洋」の体内のメタンガスなどの気体を完全に排出させることができた」と振り返る。
また解剖した際には、その体があまりに巨大であるため、「洋洋」は約600個に分解された。チームのメンバーは自作の道具で解剖しながら、「洋洋」の体を分割して固定した。その時、メンバーたちを悩ませたのは腐敗して生じた死臭。呉館長は、「製作の中期段階において、メンバーたちは防腐、脱水、脱脂、シーリングなどの作業を繰り返し行い続けることで、最終的にその死臭が少しずつ消えていった」と振り返った。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年7月15日