上海で「サイレント配達員」が活躍中 中国初の聴覚障害者配達チーム

人民網日本語版 2020年08月26日09:33

上海の宅配便配達員・許昇良さん(27)が最近、ネットユーザーの間で話題となっている。許さんは、赤いベストを着て、首からホルダーを下げ、上海の街中を「黙々」とバイクで走り回っている。中央テレビニュースが報じた。

許さんのように赤いベストを着た配達員は、見ただけでは特に変わった点は見当たらない。だが実は、許さんは聴覚障害者だ。許さんは、中国初の聴覚障害者配達員チーム「サイレント配達」のメンバーなのだ。

1年以上仕事を探していたという許さんは、他の聴覚障害者39人と共に「サイレント配達員」になった。

上海で室外の気温が35度となったある真夏日の午後3時ごろ、許さんは電動バイクに乗って、ある団地に到着した。そして1階入り口のインターフォンを押し、スマホをかざして、「こんにちは。私は聴覚障害者の配達員です。荷物をお届けにあがりました」という録音済みの音声を流す。扉が開くと、許さんは一気に6階まで駆け上がった。

この日、許さんが荷物を届けるために6階まで行くのはもう5回目。全身汗だくになって下の階に降りながら、許さんは手話で、「お客さんは荷物が届くのを心待ちにしている。僕たち聴覚障害者が配達する時はコミュニケーションが取れないので、できるだけ早く届けたいと思っている」と話した。

現在、上海の虹口区と普陀区には「サイレント配達員」が40人おり、1日に約200個の荷物を配達している。彼らは同じ営業所の健聴者と同じく、「同一労働同一賃金」の待遇を受けている。

「サイレント配達」チームの発起人である顧忠さんは以前、手話ニュースの司会者をしていた。両親が聴覚障害者であるため、顧さんは子供の頃から手話ができ、これまで身体障害者を助ける公益プロジェクトを数多く企画してきた。

今年初め、新型コロナウイルスの影響で、顧さんが慈善事業の一環としてやっているスーパーに来店する客が激減。その一方で、オンラインショッピングは利用者が急増して、配達は人手不足となっていた。そこで顧さんは、手話を活用して、仕事がなくて困っている聴覚障害者を募集し、配達業務をサポートしてもらうことを思いついたという。

顧さんが微信(WeChat)のソーシャル機能「朋友圏(モーメンツ)」に「サイレント配達員」募集広告をアップしたところ、それを見た聴覚障害者らが次々にそれを転送し、すぐにたくさんの聴覚障害者が集まった。そして省や市を跨いだ交通が再開されると、たくさんの聴覚障害者が上海市以外の地域からやって来た。

まず、「サイレント配達員」は慈善スーパーの商品配達を担当した。その後、顧さんは近くで人手不足となっている宅配便会社の営業所と連絡を取り、「サイレント配達員」が健聴者の配達員と一緒に荷物の配達ができるように手配した。許さんが所属している涼城路の営業所を例にすると、配達員60人のうち、9人が聴覚障害者だ。

現在、配達員の仕事をしたいという聴覚障害者からの問い合わせがどんどん増えている。顧さんは現在、複数の地域の特別支援学校と連絡を取り、貧困地区の聴覚障害者が「サイレント配達員」として就職できるようにすることを計画中だ。年末までに同チームの規模は300人まで拡大する見込みという。

許さんは、「配達員というのは、苦労に耐えることができさえすれば、稼げる仕事。平等な仕事の環境は、聴覚障害者が切望しているものだ。だからこそ聴覚障害者たちは、汗水を垂らすことでより良い暮らしを手に入れることのできるこのチャンスをとても大切にしている」と話す。(編集KN)

「人民網日本語版」2020年8月26日 

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