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12月3日、工業情報化部(省)は「第14次五カ年計画工業グリーン発展計画」を発表し、水素エネルギー技術のイノベーションとインフラ建設を加速し、水素エネルギーの多様な利用を推進するとの明確な方針を打ち出した。人民日報海外版が伝えた。
燃料電池車(FCV)は水素エネルギー利用の重要な手段で、ここ数年で急速に発展した。来年2月に開幕を控えた北京2022年冬季五輪・パラリンピックの会期中には、張家口ゾーンにFCVが625台投入され、交通・輸送サービス面の保障を提供することになる。
リチウムイオン電池と比較して、燃料電池(FCV)にはどのような優位性があるのだろうか。なぜもてはやされているのか。
どんな優位性が?
FCVには、航続距離がより長い、環境により優しい、固定された路線や中長距離や積載量の大きいシーンでより優位性を持つといった特徴がある。
真冬の時期に、河北省張家口市ではFCVの路線バスが400台以上縦横に走り回っている。このバスは零下30度の極寒の環境でのストック、コールドスタート、温風・空調のスイッチが入った状態で300-450キロメートルを走る長航続距離を実現している。北京五輪・パラ期間には、さらに多くのFCVが張家口ゾーンで交通・輸送サービスの保障を提供し、グリーン冬季五輪・パラをサポートすることになる。
「二酸化炭素(CO2)排出量ピークアウトとカーボンニュートラル」の目標が設定されたことで、水素エネルギーがますます注目を集めている。水素協議会の予測では、2050年には、世界の水素エネルギー産業は3千万人の雇用を生み出し、CO2排出量を60億トン削減し、2兆5千億ドル(約285兆2千億円)規模の市場を生み出し、世界のエネルギー消費の18%を占めるようになるという。
中国自動車工業協会の王耀事務局長補佐兼技術部部長は、「FCVは現在の交通分野における水素エネルギー利用の重要な手段であり、水素を燃料として電気化学反応により燃料のもつ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。エネルギーの変換効率が高く、CO2を排出しないなどの特徴がある。リチウム電池を利用した電気自動車(EV)に比べ、FCVは航続距離が長く、水素の充填時間が短く、グリーンでより環境にやさしい」と述べた。
消費者が最も実感できるのは航続距離が長くなったことだ。王氏は、「水素はエネルギー密度がより高い。極めて高いエネルギー密度によって、FCVの車両は航続距離で既存のガソリン車に容易に追いつき、そして追い越すことができる。北米市場で販売されているトヨタの『MIRAI(ミライ)』の場合、新モデルは海外でのテストで実際の航続距離が1003キロメートルに達した。このほか、FCVは低温環境への適応性が特に高い。極寒の環境でも、FCは低温によって航続距離が短くなることがなく、燃料切れの心配がない」と述べた。
王氏は、「こうしたFCの特徴からすると、FCVは港湾や物流パークなどの相対的に閉鎖され固定された路線、距離がバッテリー電気自動車(BEV)の航続距離の限界を超える中長距離シーン、積載量の大きいシーンにおいて、より優位性を持っている。BEVは現在の技術的条件の下では電池のエネルギー密度を高めようにも限界があり、大型トラックで長い航続距離を実現するというニーズに応じて電池を増やせば、重量が増えて重くなってしまう。そのため、FCはより大きな積載量のニーズがある場面でより優位性を持つことになる」との見方を示した。
もてはやされる理由は?
水素エネルギーは19年に初めて「政府活動報告」に登場した。20年9月には、財政部(財務省)など5部(省)・委員会がFCVのモデル応用展開に関する通知を発表し、FCVの購入補助金政策をFCVモデル応用支援政策に調整すること、条件を満たした都市クラスターがFCVの重要コア技術の産業化における難関攻略とモデル応用を展開することに対し、奨励金を支給することを打ち出した。
政策の支援により、全国各地で水素エネルギーの発展が加速した。大まかな統計では、中国国内ではこれまでに地級市(省と県の中間にある行政単位)50数ヶ所で水素エネルギー産業計画が発表され、北京市、山東省、河北省、河南省などは第14次五カ年計画水素エネルギー発展計画や支援政策を相次いで打ち出し、産業の規模、企業の数、FCV、水素充填ステーションなどでの段階的な目標を明確にした。同時に、各地方はさまざまな水素エネルギー補助金・奨励政策も打ち出した。
水素充填ステーションの建設も活発に進められている。関連機関が発表した「中国水素エネルギー産業市場見通し及び投資チャンス研究報告」によると、今年6月初めまでに、中国国内で水素充填ステーションが141ヶ所建設され、建設中が73ヶ所、建設が計画されているものは118ヶ所ある。
業界では、FCVには大きな発展の可能性があるという見方が一般的だ。中国水素エネルギー連盟の予測では、30年には中国の水素需要は3500万トンに達し、末端のエネルギー体系の中で5%を占める。50年には6千万トンに達し、10%を占め、産業チェーンの年間の付加価値は12兆元(約215兆円)になる。このうち交通輸送分野の水素エネルギー使用は2458万トンになり、この分野でのエネルギー使用の約19%を占めるようになる。こうした予測は、将来、水素エネルギー産業チェーンがリチウムイオン電池産業チェーンとともに「両雄」として並び立つ局面が形成される可能性があることを意味する。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年12月20日