標高4410メートルの無人エリアにそびえ立つ「宇宙の宿場」

人民網日本語版 2022年05月31日14:08

四川省甘孜蔵(カンゼ・チベット)族自治州稲城県の海子山の標高4410メートルの地点にある高標高宇宙線観測ステーション「拉索(LHAASO)」は現在、世界で標高が最高、規模が最大、感度が最強の宇宙線検出装置だ。着工は2017年で、2021年に全アレイの建設を終え稼働開始した。華西都市報が伝えた。

これほど高標高の原始的な無人エリアで、どのようにしてこれほどの規模のビッグサイエンス装置を作ったのだろうか。「拉索」プロジェクト首席科学者を務めるプロジェクトマネージャーの曹臻氏を取材した。

高標高宇宙線観測ステーション(画像出典:中国科学院高エネルギー物理研究所公式サイト)

「超高エネルギー」の新時代

西暦1054年、北宋の司天監(古代の官職で、 陰陽頭の別称)の楊惟徳が月に次ぐ明るさの天体を観測した。この星は日中も光を放った。当時の中国、アラブ、日本の天文学者がいずれもこの奇妙な天体現象を記録した。

その後、これが超新星爆発であったことが証明された。この爆発により生じたかに星雲は、人類史上初めて確認された超新星残骸だ。人々はその後、各波長でそのスペクトルの研究を行った。これによりかに星雲は人類が最も全面的に認識している天体の一つになった。

だがかに星雲の重要部分、つまり超高エネルギーのガンマ線がまだ明らかになっていなかった。「拉索」の登場により、人類は新たな視点からかに星雲を観察できるようになった。科学研究者は21年7月、4分の3までしか完成していない「拉索」を使い、かに星雲の輝度を正確に測定した。この成果は「サイエンス」に掲載された。

「拉索」が稲城に作られたのは、宇宙線の粒子が大気を通過する際に吸収されやすく、標高が高く空気が薄い場所に検出器を設置するほど感度が上がり、宇宙線粒子の信号をキャッチする可能性が上がるからだ。

毎日数十億本の宇宙線を迎える

空から眺めると、敷地1.36平方キロメートルの「拉索」は3つの検出器アレイからなっている。これは5195台の電磁粒子検出器と1188台のミュー粒子検出器からなる地上シャワー粒子アレイ、3120の検出ユニットに分かれる7万8000平方メートルの水チェレンコフ検出器、18台の広角チェレンコフ望遠鏡のことだ。

曹氏は、「3種の検出器アレイは分業されており、相互に裏付けかつ補完できる。望遠鏡アレイが記録するのは宇宙線が地上に到達する前の空中における全過程であるのに対し、その他の2つのアレイは到達時の瞬間的な情報をキャッチする」と述べた。

完成後の「拉索」には毎日数十億本の宇宙線が到達し、地球上で最も忙しく宇宙線という客を迎え入れる「宇宙の宿場」のような存在になっている。将来、「拉索」はこれらの宇宙線の研究を通じ、より多くの宇宙の神秘を明らかにするだろう。(編集YF)

「人民網日本語版」2022年5月31日

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