17、20、22年の火花海水域のドローンリモートセンシング画像。画像提供は中国科学院航空宇宙情報イノベーション研究院
中国科学院航空宇宙情報イノベーション研究院及びユネスコ国際自然・文化遺産空間技術センター(HIST)はこのほど、世界遺産・九寨溝の震災後の動的変化のリモートセンシングモニタリングの成果を発表した。同成果から、九寨溝エリア内の全域で植生が徐々に回復しており、大きく注目された火花海がかつての美しさを取り戻したことが分かった。中国科学報が伝えた。
2017年8月8日に九寨溝でM7.0の地震が発生し、遺産エリア内の生態環境の質が深刻な損害を受けた。九寨溝の回復と発展を促進するため、同研究院の付碧宏研究員が筆頭になり、九寨溝「宇宙・空中・地上」モニタリングプロジェクトを展開した。プロジェクトは3年にわたる研究において、九寨溝の保護・回復宇宙情報モニタリングシステムを研究開発し、世界遺産の保護・管理における国際科学技術コンサルティング・研修プラットフォームを構築し、九寨溝の保護管理に重要な科学的データと技術的サポートを提供した。
リモートセンシング画像の分析から、九寨溝の2017年(震災前)の植生被覆エリアは全域総面積の82.11%を占めたのに対して、震災後は79.91%に低下した。震災後の回復・再建の展開に伴い、植生被覆エリアは20年に81.07%、22年に80.91%に上昇したことが分かった。植生被覆率が震災前の水準に近づいた。
研究チームは九寨溝全域の植生被覆率を「高い」「やや高い」「普通」「やや低い」「低い」の5つのレベルに分けた。うち「低い」「やや低い」植生被覆エリアの面積が大幅に縮小し、「普通」「やや高い」に変わり、植生被覆の安定性が上昇している。これは近年の九寨溝の震災後生態回復対策が積極的な役割を果たしたことを示している。うち植生回復は九寨溝自然遺産地の日則溝と則査洼溝に集中し、熊猫海−五花海一線南西部の回復状況が最も良好だ。
火花海は九寨溝の重要遺産スポットとして、研究チームの重点的なモニタリング対象だ。リモートセンシング画像から、震災後の回復と再建により、火花海決壊エリアの石灰化堤防が完全に修復されており、その水域もほぼ回復したことが分かった。20年10月より一般公開が再開された。付氏は、「22年7月にドローンで取得した映像を見ると、修復後の火花海の堤体が安定し、上流から十分な水が流れ込み、水が透き通っており、周辺の植生がほぼ回復し、かつての美しさを取り戻しつつある」と述べた。
震災後の地すべり危険エリアの空間的分布と変化状況を定量研究するため、研究チームは17年、17−19年、19−20年の地すべり各レベル危険エリアが占めた割合を調査した。17−19年の震災後地すべり危険エリアの結果から、17年と比べ「発生しやすい」「極めて発生しやすい」エリアが11.00%に急低下したことが分かった。「極めて発生しにくい」エリアの割合が急上昇し、13.56%から51.87%に上昇した。19−20年の震災後地すべり危険エリアの結果から、17−19年と比べ「発生しやすい」「極めて発生しやすい」エリアが持続的に縮小し、全体に占める総割合が11.00%から8.71%に低下した。「極めて発生しにくい」エリアが持続的に拡大し、その割合が51.87%から55.57%に上昇したことが分かった。
データによると、震災後の自然回復に加え、人工的な対策・修復を経て、九寨溝遺産地内の地質災害のリスクが大きく低下した。(編集YF)
「人民網日本語版」2023年6月13日