近年、社会には原発を恐れ、反対する声が上がっている。中国原子力科学研究院の万鋼院長は、この問題について異なる見地から分析を行っている。万氏は、人々の原発産業への理解不足、重大原発事故の社会への重大な悪影響よりも重要なのは、原発産業の内外に安全の概念を拡大化する状況があり、人々との意思疎通を妨げている点だと指摘した。科技日報が伝えた。
業界から注目を集めている「中華人民共和国核安全法(草案)」は2016年に、全人代常務委員会の第一審に提出され、意見を募集している。
草案は原発の安全を次のように定義している。「原発施設、核燃料の必要かつ十分な監督管理、保護、予防、軽減などの安全措置を講じ、すべての技術的・人的原因もしくは自然災害による事故を防止し、事故発生時の放射能を最大限減らすことで、事業者、一般市民、環境を原発事故の被害から保護する」。
万氏はこの定義は正確ではなく、原発施設と核燃料のすべての安全を原発の安全とする誤解を生みやすいと考えている。そして「これは実情に合致しておらず、原発産業の発展と監督管理に資さず、人々との意思疎通にも資さない」とした。
万氏は「原発の安全は核分裂性材料もしくは核融合材料と密接に関連する安全であり、原発の安全定義は核融合のコントロール喪失や核融合により生まれる放射性物質の漏洩という、いくつかの軸となる内容から乖離してはならない。現在の原発産業の応用において、原子炉(原発を含む)の他に、臨界の安全がある。そのため原発の安全と原発産業の安全を同一視できず、また放射能に関する安全問題のすべてを原発の安全とすることはできない。原発産業の安全には原発の安全の他に、一般的産業安全と放射能の安全が含まれる。原発産業の一般的産業安全には、その他の業界と本質的な差がない。放射能安全と原発安全も、二つの異なる概念だ」と説明した。
世界的には現在も原発の安全に関する統一的な定義がなく、言語によって対象が異なっている。例えばフランスの原子力安全透明化法によると、ウランの鈍化と転化は原発の安全に含まれない。
万氏はこの現象に懸念を表し「原発の安全をめぐる世界統一の定義がなく、言語によって対象が異なり、さらに国内にも原発の安全の明確な定義がない。そのため原発業界の内外で、概念の混同が見られる。原発の安全は原発産業の最も基礎的かつ重要な概念、同法の制定の軸であり、全社会が最も注目している問題だ。法整備と結びつけ、原発の安全の科学的かつ明確な境界を設定し、認識を統一し、規範的に執行し、法律の厳粛性と公正性を守るべきだ」と述べた。(編集YF)
「人民網日本語版」2017年3月14日
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