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理想の生活の「原点」を見つめ直す日本の震災後文学

人民網日本語版 2017年03月17日10:02

日本人は「原点」という言葉が好きだ。それは、物事のはじまりやある理想の中での生活秩序という意味を含んでいる。災害は往々にして「原点」に返り、自分の生活に対する姿勢などを見つめ直す最大の機会にもなる。人はどんな風に生きるべきであり、そして災害はある種の初心を振り返るきっかけをもたらすことになりえるのだろうか?(文:呉宇楨。文匯報掲載)

日本の人気推理小説家・東野圭吾の答えは「幻滅」だ。その著書「幻夜」では、阪神・淡路大震災に紛れて「新海美冬」に成り変わり、生まれ変わることで、生きて行く女性が描かれている。この女性は震災後、単に生きるのではなく、強者として生きていく。新海美冬は、他人として生まれ変わることで、自分のすることを美化し、さらには彼女が利用する男をも「生まれ変わる」ことで洗脳していく。

東野圭吾がこのように命に対して「幻滅」する描写をしているため、「幻夜」は絶望感漂う作品と言われている。「幻夜」の主人公が生きることに対して悪であっても、悪なりの凛とした態度を取り、残酷な悪を通して、静かな生活を手に入れようとするのとは異なり、人気作家・吉本ばななが描いた生活の「原点」は、命の大切さ、生きることの素晴らしさだ。東日本大震災が発生した後、吉本ばななが刊行した「スウィート・ヒアアフター」では、地震や津波が遠く離れたバーチャルの世界で、東京に住む小夜子(28)が自動車事故に遭い、恋人を失い、生還した自分は死を感じながら、たくましく生きて行く姿を描いている。悲しみと喜びが交わり合うその過程を通して、吉本ばななは、「今を大切に一生懸命生きる人は、ある意味『あまい来世』を得ることができる」ということを伝えている。

東野圭吾の「絶望」も吉本ばななの「来世」も、災害に直面した時でも驚くほどの秩序を保つ日本人の姿を反映している。このような非凡な冷静さが示している生活に対する基本的な理解を、詩人・谷川俊太郎の詩で言い表すことができるかもしれない。原爆で終わった戦争を経験し、戦争で荒廃した日本で育った谷川俊太郎は、命に対して独特で深い感覚を抱いている。その有名な詩「言葉」では、命のはかなさなに面して、「何もかも失って、言葉まで失った」としながら、人々の生活に対する想像、表現が滞ることはなく、「言い古された言葉が、苦しみゆえに甦る、哀しみゆえに深まる、新たな意味へと、沈黙に裏打ちされて」と書いている。変化しないものは何もないという認識のもと、絶えず変わる現実の中で、日本の震災後文学は、理想の生活の「原点」を見つめ直している。 (編集KN)

「人民網日本語版」2017年3月17日

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