コダックは従来のフィルム事業はまだ中国では市場拡大の余地があると考え、中国市場であれほど急速にデジタル時代が到来するとは考えていなかった。古森会長は、「他社も富士フイルムと同様の問題に直面すれば、同様の措置を執るが、富士フイルムの動きはもっと速く、早く、決断も早かった。コダックも方針決定を行ったが、行動はやや遅かった。これが両者の違いだ。経営者の自分は2つのキーワードがあると考えており、1つはクイックディシジョン、素早い方針決定、もう1つはクイックアンダースタンディング、事実の素早い把握と理解だ」と述べた。
古森会長は続けて、「富士フイルムとコダックの2つ目の違いは未来の戦略が違っていたことだ。コダックは、『真のデジタル企業になる』ことを打ち出したが、富士フイルムは逆に、将来に単なるデジタル画像映像企業になったなら、会社の大規模な発展を支えることはできなくなると考えた。そこで第3の道を選択し、経営を多様化し、医薬品分野への進出、化粧品の発売、高機能材料の取り組みなどを進めた。デジタル技術だけを固守していたなら、写真や画像などのデジタル事業を開拓したとしても、売上高は最大でも数千億円規模にとどまる。デジタル化の時代に一人勝ちは難しく、価格競争が日に日に激しくなる中、最終的には利益確保すら難しくなる可能性もある。よってデジタル事業だけでは、数兆円規模の企業を維持することは困難だった」と振り返った。
古森会長は、「3つ目の違いとしてコダックは経営の方向を見失い、どちらに行くべきかをはっきりさせられなかったことがある。富士フイルムは完全かつ徹底的に改革を進めると決意しており、偉丈夫が毒蛇にかまれた腕を切り落として毒が全身に回るのを防ぐように思い切って決断した」と述べた。
多くの企業が発展の過程で産業の枠を超えた発展、経営の多様化を試みるが、成功例は少ない。富士フィルムがヘルスケア産業や化粧品産業を選択したことは、当初は大きなリスクへの挑戦だったといえる。
古森会長は、「新しい分野に参入する場合、大きな未知数に直面するのは確かだ。正確な判断を下し正確な選択を行うには、経営者がある種の能力を備えていなければならない。たとえば企業を買収する場合、その企業の価値はどこにあるのか、買収に値するのか、こうしたことを判断できる能力を経営者は必ず備えていなければならない」との見方を示した。
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