毎回それぞれの時代背景を映し出すドラマ版「黒革の手帖」
「黒革の手帖」は1970年代末から、「週刊新潮」で連載が始まった。中国人に最も広く知られる米倉凉子版のドラマ「黒革の手帖」と違い、原作の元子は若くも美しくもなく、ヒロインのオーラなど全くない。男性主人公も、彼女を愛することはなく、他の人と一緒になって彼女をだまし、近付く人や交際全ては、彼女を陥れるための計画の一部だ。元子もあらゆる手練手管を尽くすものの、最終的には敗北を喫する。
ある日本の学者は、このようなストーリーは、松本清張の社会派の作風と関係があり、現在の日本の時代背景とも密接な関連があると分析している。当時、日本の会社や企業は、女性従業員を決して優遇していなかった。そのため、結婚適齢期になっても、仕事をしていると、無視されたり、窓際に追いやられたりした。原作では元子が銀行で15年働いていたものの、そのような運命を変えることはできず、その不満を心に秘めていた。松本清張が、聡明で仕事ができる主人公の結末を悲惨なものとして描いているということは、日本の女性が男性主義社会において、野望を実現することができずに絶望を感じていることを見通していたようだ。
ここ20年、日本ドラマは「激励」系へのシフトチェンジが際立っている。そのため、元子は、抑圧されながらもそれを跳ね返し、自分を見下げていた人を見返す女性になった。主人公の「逆襲」は非常に痛快で、多くの人が「黒革の手帖」を見る最大の理由になっている。そして、同作品の人間性への深い追求は忘れ去られているかのようだ。幸いにも、ドラマの設定から、時代発展の脈を感じ取ることができる。
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