抑揚のある琴や笛の音に合わせるかのように、大きな川が流れる街中を荷物を担いで行き交う商人たち、黒い瓦と白壁の建物の前で雑談する人々と凧を持って楽しそうに遊ぶ子供たち。画家・仇英の「清明上河図」や徐揚の「姑蘇繁華図」などの古画で描かれているこうしたシーンがゲームの世界に登場し、話題となっている。人民網が各社の報道をまとめて報じた。
最近、中国明代の街づくりを楽しめるシミュレーションゲーム「江南百景図」が大人気となり、大きな話題となっている。数ヶ月前に、「あつまれ どうぶつの森」で、キャベツの値段の変動に注目していた「島民」たちは今、その遊び場を「江南百景図」に移して、盛り上がっている。
今年初めに微信(WeChat)のソーシャル機能「朋友圏(モーメンツ)」の話題をさらった「どうぶつの森」と同じく、「江南百景図」もシミュレーションゲームだ。明の時代の江南を背景に、プレイヤーは都市設計者となり、建物を建設したり、街づくりを計画したり、住民が働いてお金を稼げるようにしたりして、最終的に、明の時代の江南の繁栄する様子を作り出す。
中国江南の伝統的な徽派の建築スタイルと「清明上河図」の画風がマッチしており、手の込んだ画面作りと心地よさを感じさせる配色というのが、多くのプレイヤーの「江南百景図」に対する第一印象だ。「江南百景図」を開発することにした理由について、ゲームの開発者は、「このゲームを通して、中国テイストというのは、赤い壁に黄色い瓦、スケールの大きな北京だけではないということを世界の人々に伝えたい。長江下流地域の江南にも、情緒あふれる白壁に黒瓦の建物、小さな橋がかかる優美な川、どこか哀愁を感じさせる霧雨といった美しい風景がある」と説明する。
プレイヤーは自分だけのオリジナルの江南を作って、達成感に浸ることができる。ゲーマーのShirleyさんはずっと江南への憧れを抱いてきた。絹布の上に水墨で昔の風俗を描いた絵が大好きで、自分が絵の中の登場人物になった夢を見るほどだった。そんな彼女が幻想にすぎないと思っていた「絵の中に入り込む」ことが、思いもよらないことにこの「江南百景図」で実現した。
「江南百景図」では、最初はプレイヤーが操作できる住民やお金に限りがある。荒地を開墾して、新しい住民を少しずつ増やしていき、生産施設も増やし、規模を大きくして収益が出るようになって初めて、さらに荒地を開墾して新たな自分の土地を手に入れることができる。そのような仕組みであるため、プレイヤーのゲームをもっと続けたいという気持ちが自然とかきたてられる。「江南百景図」では、建築物に固定の位置はなく、プレイヤーが自分のセンスで位置を決めることができる。また、マップ上では、環境との調和を無視してむやみやたらに建築物を配置していくとレベルをアップすることができず、美しい景観づくりをして初めてゲームを続けることができるなど、配置のセンスも問われる仕組みとなっている。その他、住民同士の間で交友関係も生まれ、日常の会話をするほか、赤ちゃんが生まれたり、年を取ったり、病気になったり、死んだりもするなど、さまざまな工夫が凝らされている。
しかし、後半部分に入ると、毎日金貨をゲットすること以外、特に目新しいミッションがなくなり、経験値の高いゲーマーは、「もっと遊びたいという気持ちが起きない」との声を寄せている。それでも、ゲーマーたちは「江南百景図」を「放置系ゲーム」に位置付け、しばらく放置しておくとレベルアップしていくという過程を楽しみ、「のんびり遊ぶというのが楽しい」と感じている「仏系(仏のように物事に拘泥しない人々を指す)」のゲーマーも多い。
数年前に中国でも大ヒットした「旅かえる」は「仏系」ゲームの代表的存在だ。同ゲームでプレイヤーができることは、旅に出るかえるにおべんとうやおまもりを持たせることだけで、あとは、かえるが旅先から時々送ってくるはがきを見たり、かえるが帰ってくるのを待ったりするしかない。仏系ゲームが台頭しているのは、リズムの速い生活を送っている人々が、浮世離れした所に身を置きたいと感じるようになっているからにほかならない。その背景にあるのは、多くの人々が感じるようになっている「孤独」だ。バーチャルの世界に自分の居場所を作ることは、現実逃避ではあるが意味がないわけでもない。あるネットユーザーは、「『どうぶつの森』の中で、ずっと友達と一緒に楽しく笑って遊んで一日を過ごすことができるのであれば、誰が現実の世界に戻って社畜を続けることを望むのだろう?」と「本音」をこぼしている。 (編集KN)
「人民網日本語版」2020年8月27日