試合中の許昕/劉詩雯ペア。
金メダルを手にするために越えなければならない山は高い。26日に行われた東京五輪の卓球混合ダブルス決勝で中国の許昕/劉詩雯ペアは、日本の水谷隼/伊藤美誠ペアに敗れ、銀メダルに終わった。試合後、劉選手は、「ごめんなさい。卓球チームのみんなごめんなさい」と止まらない涙を拭った。中国新聞社が報じた。
決勝で、許昕/劉詩雯ペアはまず2セットを先取。しかし、そこから水谷隼/伊藤美誠ペアの逆襲を受け、最終的に3対4で敗れ、惜しくも銀メダルに終わった。2004年のアテネ五輪以来、卓球で中国が金メダルを逃したのはこれが初めてとなる。
五輪の卓球ではこれまで無双状態だった中国だったものの、混合ダブルスで金メダルを獲得することはやはり難しかった。五輪の新種目となった混合ダブルスの金メダル第1号で、東京五輪の卓球競技における金メダル第1号で、そして主催国の日本が最も切望していた金メダルだったからだ。
1988年のソウル五輪で卓球が実施競技になって以来、7大会の金メダル32枚のうち、28枚を中国が獲得してきた。その他の国や地域が男女シングルスや団体などの種目で金メダルを獲得するのは至難の業で、元々卓球において高い実力を示してきた日本にとっても、これは「言わずもがな」であったと言える。
そんななか、日本は東京五輪開催を機に、新種目として混合ダブルスを追加することを提案し、卓球で金メダルを奪取する突破口としようと取り組むようになった。それは、決して非現実的な夢ではなかった。中国卓球協会は長年、世界で卓球を広めるよう取り組み、戦略的な観点から、混合ダブルスにそれほど力を入れてこなかった。そして、2017年 の卓球世界選手権の混合ダブルスでは日本の吉村真晴/石川佳純ペアが優勝。東京五輪での悲願の金メダル獲得へ期待がさらに高まった。
中国の卓球は常に選手層が厚い状態で、国際大会となると、団体戦にも、個人戦にも多くの選手が出場し、必ず誰かがどこかのブロックから勝ち上がってくる状態となってきた。しかし、東京五輪の混合ダブルスの規定では、各国・地域から出場できるのは1組のみで、そのルールも日本が金メダルを獲得するのに追い風となったことに疑問の余地はない。
新種目として混合ダブルスを追加することを推し進めていた時、日本はこの中日対決のシナリオをすでに思い描いていたのかもしれない。
表彰台に上がる許昕/劉詩雯ペア。
許選手と劉選手は、「最強タッグ」と見られていた。なぜなら、許選手は左利きで、フォアハンドを中心にプレーする「ペンドライブ型」で、台から離れた場所から打つロビングを得意とする選手。一方の劉選手は右利きで、その戦型は「シェーク攻撃型」、台に近い場所で打つ技術が高いためだ。
しかし、2018年末、許選手と劉選手が初めてペアを組み、国際試合でもほぼ敵なしの状態だったものの、弱点がなかったわけではない。1つには2人ともすでに30代であり、なかでも劉選手は昨年、怪我に悩まされ、約1年間、練習ができず、試合にも出られない状態だった。それもまた、日本が勝利する確率を上げる要因となってしまったといえる。
一方、水谷選手と伊藤選手は、2人とも静岡県出身で、同じ卓球少年団に通い、さらにペアを組んで4年になるため、完全に息が揃ったプレイをすることができる。ただ、これまで、許昕/劉詩雯ペアとは3戦3敗を喫していたため、決勝開始前の取材でも、金メダルを獲得できるかどうかに関しては、十分な自信は無いとしていた。
決勝戦のシナリオを描いていたとしても、勝負は下駄を履くまで分からないものだ。決勝戦では、許昕/劉詩雯ペアが第1セットと第2セットを連取した。ところが、その後の3セットを連続で日本に奪われ、最終第7セットに入った時、許昕/劉詩雯ペアのプレッシャーはピークに。結局、日本に8ポイントを連取され、0対8というまさかの展開となり、最後の追撃もむなしく力尽きた。
試合後、ミックスゾーンでインタビューに応じた劉選手は涙が止まらない状態で、許選手も放心したような面持ちで、「初めの2セットは良かった。でも、第3セット、第4セットは力を出せなかった。相手に何ポイントか取られた後、僕たちの球の質が落ちていた。そして、点差が開いてからは、自分たちの戦術を見失ってしまった」と肩を落とした。
2人が3年後のパリ五輪に出場する可能性は低い。
これまでに、五輪や世界選手権で何度もメダルを獲得してきた水谷選手が試合後に語った「今も昔も中国の壁はみなさんが思っているよりも高くて、今まで越えることができなかった。そんな中で今回は少しは活路を見いだせた。五輪という特別な舞台だと中国選手も同じ人間だと感じた」という言葉は、非常に興味深い。
1つの競技が末永く発展するためには、優れた競争が必要となる。競争の中でこそ、互いにレベルを上げることができる。今回は金メダルを逃し、今後も苦戦を強いられたとしても、中国はいつか必ずそれを奪取するだろう。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年7月27日