ここしばらくの間、日本円の対米ドルレートが大幅に低下し、現在は24年ぶりの最低水準に達している。中国新聞網が伝えた。
最近、10年もの米国債の利回りは3%前後で推移するのに対し、10年もの日本国債の利回りは0.25%前後で安定している。両者の利回り差は275ベーシスポイント前後に拡大した。この利回り差は基本的に2008年の世界金融危機以降で最大の米日間の利回り差となる。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げとバランスシート縮小は米日間の金利差を著しく拡大し、これが最近のドルに対する大幅な円安の1つ目の主な原因だ。
より問題なのは、FRBは利上げとバランスシート縮小を進め、欧州中央銀行も量的緩和政策を終了して利上げに踏み切ると発表したが、日本銀行(中央銀行)が行動を起こさず、これまでと同じように国債の長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)を続けるだけなのはなぜか、ということだ。日本経済にこれまで米国経済のような過熱現象が見られなかったから、というのがその答えだ。
一方で、2021年第4四半期(10-12月)と22年第1四半期(1-3月)には、米国の国内総生産(GDP)の季節調整値の前年同期比成長率がそれぞれ5.5%と3.5%に達したが、同じ時期の日本の同成長率はわずか0.4%と0.7%だった。他方で、22年5月には、米国の消費者物価指数(CPI)の季節調整値の成長率は8.5%と高かったが、日本は2.5%にとどまった。
言い換えれば、自国の経済成長率とインフレ水準が合理的な範囲に収まっていたため、日銀は自国の金融政策の独立性に基づいて、FRBに追随しない方針を選択したのだ。日米両国の金融政策の方向性の相違が、最近のドルに対する大幅円安の2つ目の主な原因だ。
ある国の為替レートの変動は通常はその国の外国為替市場の需給の変動と関係があるが、外国為替市場の需給の変動はその国の国際収支の状況と関係がある。最近の日本は輸出額の動きに比べて、輸入額が上昇する傾向にあり、22年5月には輸入額が9兆8千億円を記録した。この数字とロシア・ウクライナ紛争発生後の日本の輸入コスト上昇との間に大きな関係があることは間違いない。
22年4月と5月には、日本の金融収支の赤字は8340億円と4312億円に上ったのに対し、証券投資はそれぞれ7兆3千億円と4兆3千億円の純流出となったが、このデータは歴史的に見ればなお正常の範囲に属する。よって、輸入コストの上昇が招いた物品貿易の赤字が段階的に過去最高を更新したことが、最近のドルに対する大幅円安の3つ目の主な原因だ。このほか、日米の金利差は著しく拡大したが、日本にこれまでコントロール不可能なほどの資本の流出が起きなかったこともある。
このように、最近のドルに対する大幅円安には3つの主な原因がある。1つ目はFRBの利上げとバランスシート縮小が米日の長期金利差を急速に拡大させたこと。2つ目は自国の金融政策の独自性を維持するとの考えから、日銀がFRBに追随しなかったこと。3つ目はロシア・ウクライナ紛争発生によるグローバル市場のコモディティ価格上昇が日本の輸入コスト上昇を招き、日本の物品貿易の赤字を歴史的な高水準に押し上げたことだ。新興市場国と異なり、大幅なドル高・円安となっても日本にはコントロール不可能なほどの大規模な短期資本の流出現象はみられなかった。
円安の流れは続くのか?
これから円の対ドルレートはどうなるだろうか。短期的に見れば、FRBは引き続き利上げとバランスシート縮小を進め、10年物国債の利回りを一定程度引き上げる可能性はなおあり(現在の3.0%からさらに3.4-3.5%に引き上げる可能性がある)、ドル指数も110前後まで上昇する可能性がある。
しかし、現在では米国内のインフレはピークを迎えたとみられ、米国経済には衰退に陥る可能性や、ドル指数が著しく上昇して世界金融市場の動揺をさらに激しくする可能性が見え始めている。こうした要因を考慮すると、円がドルに対してさらに値下がりする可能性は縮小したとみられる。おそらく1ドルあたり140円と145円という数字が重要な節目になるだろう。短期的に140円まで値下がりする可能性は排除できないが、145円まで下がる確率は非常に低いだろう。(文:張明・中国社会科学院金融研究所副所長、国家金融・発展実験室副室長)(編集KS)
「人民網日本語版」2022年7月19日