小野寺氏「中国で日本語教育の質的な変化がある」 (3)
-----卒業後にやはり中日友好にかかわっているのか。
日中友好ということに対する理解ですが、日本語学習者が日本語の学習を通じて賢くなり、能力を高め、自分の理想を追求していくことがプラスであって、日中友好という枠でみるべきものではないと思っています。ですから、ある面で日本語を勉強し、反日になるというのもひとつの選択肢になわけです。我々の教育というのは、多様な人間を育てることで、型にはめた人間を育てているわけではないので、いろいろな多様性まで含めて、大きな視点で取り組む必要があるだろうと思っています。
-----中国人学生の日本語に対する興味に変化はあるか
日本語教育の質的な変化があると思っています。私が最初に教えた1993年ぐらいの学生というのはやはりエリート教育です。学生も教える側もエリート、エリートにエリートが教えるという教育です。それがいまの日本語教育というのは、大衆教育になっていますので、初期の学生が日本語を選択する理由というのは、就職に有利かどうかという視点ではないと思います。しかし、いまの学生が日本語を選択するのは、就職に有利だからです。需要と供給の関係からすれば、英語と比べて需要は同じでも、日本語の供給は英語3分の1です。したがって、今回のような問題が起き、就職に不利になると、日本語を専攻する学生が減るだろうなと。ですから、いまの学生の気質とすれば、経済の状況、日中関係については微妙にではなくて、大きく反応するだろうなと。日本語教育にとってはマイナスだと思います。
-----中国人の日本語学習熱と日本人の中国語学習熱を比べるとどうか。
中国が経済的に発展し、力を付けていく中で、日本やアメリカを含め全世界的に中国語熱が高まっています。投資家のビル・ロジャーズなんかも娘さんに中国語を勉強させている。そういう功利的な勉強もありますが、古代から近世までを含めいままでの日本人の中国語の学習というのは恐らく功利的ではないですね。学問的な興味に基づいて勉強しているということです。そういう意味でいえば、日本でも恐らく中国熱が下がるだろうと。ですから本来的に言えば、経済の状況、国と国との関係にかかわらず、あくまでも学問のひとつとしてみれば継続性があってしかるべきかなというふうに思います。
-----会費は日本人会員が2000円、中国人会員が100元ということだが、少ない会費で運営していけるのか。
会費だけで運営していくのは非常にきついわけですが、一緒に気持ちを同じくして活動してくれる皆さんを増やしたいということでハードルを低くしました。ですから我々の活動というのは大きなことはできないんですが、日中の市民の心の交流を大事にしていこうということで活動を行っていますので、ある面で自分の財布からの持ち出しで活動している部分があります。そのため大きなことはできないので、小さなことを長くするよう心がけています。
「人民網日本語版」2012年12月11日
【小野寺氏のインタビュー】