日本に進出する中国企業とスカウトされる日本の技術者 (2)
パートナー企業の技術者と現場で問題解決
中国大手通信機器メーカー「華為(ファーウェイ)技術」の日本法人「華為技術日本」で現在、日本の市場向けのポータブル端末を開発している高級システムエンジニア・菅原史朗さんも、約20年務めていた日本の大手通信機器メーカーからヘッドハンティングされた技術者だ。
同社も積極的に日本の技術者をヘッドハンティングしている。海爾と同様、同社も日本の技術者の技術の高さに目を着けた。菅原さんは、「華為には技術者が実力を発揮しやすい環境を作り出している」と指摘する。
菅原さんは2012年6月に華為に移籍した後、スマートフォン(多機能携帯)などのポータブル端末用の無線LAN規格・Wi-Fi(ワイファイ)技術の開発に従事している。 菅原さんが手がけたスマートフォンやWi-Fiルータは既に、今年3-4月に発売された。開発の過程で、菅原さんは、同社の驚くべき開発速度を実感した。モバイル通信の分野において、コンピューター内部のチップセットの自主開発がスピードのカギを握っている。
このチップセットを自主開発できず、外部の企業から仕入れている場合、顧客である通信会社(キャリア)が故障を発見しても、対応時間が大幅に遅れることになる。なぜなら、解決策を探すために、通信会社→通信機器メーカー→部品製作企業の過程を経なければならず、回答にも同じ流れが求められる。その点、華為のパートナー企業中国海思はポータブル端末を自分で製造し、チップセットを生産している。そのため、顧客からのクレームが発生した場合、直ちに対応できるのだ。菅原さんは、「海思の技術者と共に、顧客の所に行き、故障の状況を見るため、その場で、解決策を話し合うことができる。それに、海思の中国人技術者は対応が早く、話し合った翌日に改善済みのチップセットを持ってくることもある」とメリットを語る。
菅原さんは、顧客の必要をすぐに満たすことができるため、仕事がさらにスムーズに進むと感じている。
一方、海外の技術者と開発の分野で協力するには、英語で意志の疎通が図れなければならない。しかし、日本の企業に長年勤めていた多くの技術者にとって、英語をマスターすることは決して容易なことではない。それでも、菅原さんは、「自分を成長させる機会」と、積極的にとらえている。