日本のTPP追随の得失 (2)
地政学上の訴えが満たされるのと同様、TPPによってもたらされる経済的価値も馬鹿にできない。アジア通貨危機以来、日本経済は15年連続でデフレに苦しんできたうえ、円高が続き、輸出不振が長年続いた。さらに日本経済は高齢化と地震・津波による打撃という二重の試練を経験。このうち地震と津波によって引き起された福島第1原発からの放射性物質漏れ事故はエネルギーコストの上昇を招き、工業地帯は「空洞化」の様相を呈している。こうした状況の下、安倍政権は大胆な財政出動による景気刺激策、および「無期限」の金融緩和政策を打ち出すと同時に、TPP交渉参加の助けを借りて輸出改善を後押ししようと考えている。TPP交渉参加国を見ると、米国は日本にとって第2の貿易相手国だし、ベトナム、マレーシア、チリは経済成長率が5%を超える。このため日本にとってTPP参加は工業製品輸出を促すだけでなく、安価な商品を輸入することで国内消費を刺激することもできる。
しかし、自動車業界に代表される製造業がTPP交渉参加を煽る一方で、全農や日本医師会などは次々に反対の狼煙を上げている。日本は現在米、小麦、乳製品、砂糖などの農産物に対して依然100%以上の高い関税を課している。中でも米の関税は778%にも達する。だが日本の農業従事人口は労働人口全体の4%に過ぎない。第一次産業は日本のGDPの4%を占めるに過ぎず、労働人口でもGDPの割合でも第二次産業が農業を遥かに上回る。したがって、日本はTPPから得られるメリットの方が、損なわれる利益を上回るはずだ。もしTPP交渉の過程で米国が本当に日本農業の高関税保護を特別に認めたら、安倍政権がすでに農業分野の徹底的な改良を決定していることもあって、TPP参加への「農業障壁」は自ずと取り払われる。
安倍首相がTPP交渉の順調な始動に希望を見出している理由には、国内政治の天地を覆すような変化もある。安倍首相の右翼政策は日本民族主義の台頭を促し、過去に決別する潮流を巻き起こしている。現在安倍内閣の支持率は72.8%にまで上昇。TPP交渉参加に賛成する人も1月調査時の53%から2月には63%に上昇した。安倍首相は自ら政策を決めるための手堅い基盤を得た。野党の民主党や日本維新の会からはTPP参加反対の声がまだ上がっているが、安倍首相は完全に見て見ぬふりをすることができる。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年3月12日