【第131回】著名商標に対する特殊保護-その1
商標とは商品を区別する言わばマーク、標識であり、その企業の信用度合いを伝える手段でもある。また、商標には巨大なビジネスバリューが潜在的に存在し、現在の商標登録制度においてはかかるコストも低く(一種類一件ごとの商標の登録にかかる費用は約12000円)、高収益をもたらすという特徴があるため、商標スクワッター(転売目的で企業の著名商標などを先に申請登録し、保有する者)にも大きなビジネスチャンスを与える結果になってしまっている。近年ではこのような商標スクワッティングを生業とし、商標スクワッティング専門の会社を興すもの者まで現われ、さらには一部の弁護士や商標代理機構までもが商標スクワッティングに加担する事態が起きている。
中国ひいてはアジアでも指折りの著名大学である清華大学は、1998年11月21日、 “清華”の文字の商標登録を行い、学校(教育)、研修などの項目における使用の裁定を受けた。2003年、北京の某企業が、研究、生産などの一種の保険品目において“清華”の名前を使用するとして、薬品、保険品の項目において商標登録を行った。
清華大学は、この北京企業が商標権を侵害しているとして、商標評審委員会にこの企業が登録した“清華”商標の取り消しを求めた。2012年12月末、北京市第一中級人民法院は北京企業の“清華”商標を取り消す判決を出すと同時に、 “清華”は著名商標にあたると認定した。当該事案において注目すべきポイントは以下の三点である。