1990年代には科学者が、異種間の臓器移植を試みたことがあったが、試験によって、ブタの臓器に人体内での拒絶反応という問題があるだけでなく、「毒性」も存在する可能性があることがわかった。ブタのゲノムに、内在性レトロウイルスが含まれるためである。世界保健機関(WHO)と米国政府は最終的に、解决方法が見つかるまで、すべての異種間臓器移植の臨床試験を停止することを命じ、異種移植産業の発展は長年にわたって停滞した。
2015年、ハーバード大学のポストドクターだった楊氏らが、遺伝子編集ツールのCRISPRを用いて、ブタのゲノム中の有害な可能性のあるすべてのウイルス遺伝子をノックアウトすることに成功し、この重大な難関を初めて体外で突破した。
楊氏らは最新の研究で、CRISPRと小分子薬剤を結びつけて使用し、ブタの初代線維芽細胞ゲノム中の25の遺伝子座を修正することに成功した。その後、世界最初の体細胞クローン動物である羊の「ドリー」を育てた時と同様、研究者は、細胞核移植操作を通じて、修正したブタ線維芽細胞を利用してブタの胚を作り出し、ブタの母体に植え、内在性レトロウイルスが不活性化された世界初のブタを最終的に誕生させた。
「少なくとも4カ月まで育った段階では、修正を受けた小ブタと通常の小ブタに生理上の違いは見られない」と楊氏は語る。「我々は、このブタ品種を土台としてゲノムの改造を続け、免疫拒絶反応の問題を解決し、異種間の臓器移植の臨床応用をできるだけ早く実現し、臓器移植を待つ数多くの病人を救いたいと願っている」
英国ケンブリッジ大学のイアン・マコーネル教授は、これは「希望に満ちた第一歩だ」と評価しながら、異種間のウイルス感染の問題を解決できたとしても、ブタ臓器の体中における免疫拒絶反応や生理的不適合などの数多くの障害を克服しなければならず、異種移植の発展は今後も注意深く見守っていかなければならないと指摘した。(編集AM)
「人民網日本語版」2017年8月14日
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