情報時代が到来するにつれ、「ガレージで始めたスタートアップ起業」が「シリコンバレードリーム」のおなじみのストーリとなっている。マイクロソフトやデル(Dell)などの大企業もそのようにして誕生した。学校をやめて起業するという、以前なら指をさされるような方法で起業する起業家も今は増え、大学生が起業して社長になるというサクセスストーリーも、Facebookの創設者であるマーク・ザッカーバーグらを描いた「ソーシャル・ネットワーク」のように映画化されている。(文:張燕。瞭望東方周刊掲載)
世界の多くの若者が「社長」になることを夢見ているものの、日本ではそのように鼻息を荒くする若者をほとんど見かけない。人材サービス会社・ランスタッドが33の国や地域で行った労働者意識調査では、多くの日本人は「社長」になることを望んでいないことが分かった。
「快適」で起業意欲がそがれる?
ランスタッドが行った同調査では、日本人の66.9%が「起業したくない」と回答。33の国や地域で最も高い数値だった。「スタートアップ企業で働きたい」という回答も32.1%と、グローバル平均の約60%にとどまった。
同調査は、18-65歳の週24時間以上の勤務をする労働者を対象にした。「起業したくないと思っているか」との質問に、グローバルの平均では53.1%が「はい」と回答したのに対し、日本は69.9%が「はい」と回答した。日本人以外に、ノルウェー人やチェコ人、デンマーク人も起業に対して消極的だった。
日本人が起業を敬遠するのは、その起業環境とも関係がある。「この国は起業するには良い国だと思う」という質問に、「はい」と答えた日本人は最下位の20%にとどまった。
日本人が「社長」になることを望まず、起業の環境が整っていないことに関して、小泉純一郎氏が首相を務めていた時に、経済財政大臣や郵政改革大臣、総務大臣などを務めた経済学家・竹中平蔵氏は、「日本はとても快適で、変えることが難しい社会。一旦改革の成果が出ると、みんな満足してしまい、この社会はとても快適で、改革などしなくていいと考えるようになる」との見方を示した。
そのような商業環境を背景に、日本の起業意欲は世界で下位に沈んでいる。世界銀行が最近発表した世界の190の国や地域のビジネスのやりやすさを順位付けした2017年版ビジネス環境ランキングでは、日本は34位で、前年の32位より順位を2つ落とした。
世界銀行は、資金調達や電力調達、納税などの10 項目について各国・地域を評価し、毎年同ランキングを発表している。2017年トップだったのは、企業の手続きや資金調達などの5項目でトップだったニュージーランド。以下、シンガポール、デンマークと続いた。香港地区は順位を1つ上げて4位に入った。
日本の「起業の手続き」は89位と、下位に沈んでいる。日本の中央銀行は今でも大規模な金融緩和政策を実施しているものの、「資金調達」82位、「納税」70位、「建設認可」60位にとどまっている。
特筆すべきは、安倍政権が成長戦略において、20年までに世界銀行のビジネス環境ランキングで「先進国3位以内に入る」という目標を掲げながら、逆に順位を下げている点だ。OECD(経済協力開発機構)のメンバーだけを見ても、日本の順位は23位にとどまっている。
あまりに快適な環境が、日本人の「社長になる」という意欲をそぐと同時に、安倍首相の必死の取り組みを水の泡としているようだ。(編集KN)
「人民網日本語版」2017年10月12日
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