世界保健機関(WHO)はこのほど第72回世界保健総会を開催した。総会では「国際疾病分類」第11回改訂版が採択され、ゲーム依存が正式に「精神疾患」となった。
同分類には損傷や疾病などに関する約5万5千種類の独自コードがあり、医療・衛生の専門家たちは統一的なこのコードを通じて世界各地の衛生情報を交換し、世界の衛生状況と統計データを確定する際の土台になっている。第11回版は2022年1月1日に正式に発効し、発効すれば加盟国は関連の治療や予防措置を導入しなくてはならない。
ゲーム依存は「ゲーム障害」とも呼ばれ、第11回版では精神疾患に組み込まれている。症状としては、ソロプレイゲームやオンラインゲームに無制限にはまり込む。ゲームをプレイしてばかりいて他の興味関心や日常生活がおろそかになる。悪い結果になることがわかっていながらゲームをやめられないなどがある。WHOは、「ゲーム依存と確定診断するには症状が12ヶ月以上持続することが必要だが、症状が重篤な場合は、経過観察時間を短縮してもよい」としている。
ゲーム依存は当人の攻撃的行動や心理的抑鬱といった問題をもたらすだけでなく、体を動かさなくなる、健康や食事をおろそかにするようになる、視力や聴力が低下する、睡眠不足など一連の健康問題も引き起こす。WHOは、「ゲームをプレイする人はプレイ時間をコントロールし、日常生活に支障が出ないよう注意する必要がある。心身の健康と社会生活にもたらす変化にも気をつけなければならない」と注意を促している。
一部の国ではゲーム依存は公共衛生の問題と考えられている。英国は18年6月に初の公的なネットワーク依存クリニックを開設し、韓国も法律で16歳以下の青少年に午前0時から午前6時までオンラインゲームをプレイすることを禁じている。日本ではゲーム会社がソフトウェアに注意を呼びかける機能を加え、一か月のプレイ時間が一定の長さを超えると、注意メッセージが送られてくる。
NHKの報道によれば、新しい「国際疾病分類」はゲーム依存の問題に対する人々の科学的理解を深め、医学界に新たな研究の方向性が加わることを奨励する上でプラスになるという。英国・ロンドンのナイチンゲール病院の科学技術依存症の首席専門家リチャード・グレアム氏は、「ゲーム依存が精神疾患に組み入れられれば、病院がゲーム依存の人により専門的なサービスを提供する上でプラスになる」との見方を示す。
一部のゲーム企業は積極的な反応をみせる。日本のソニーの吉田憲一郎最高経営責任者(CEO)兼社長は、「ゲーム依存の問題を解決するには、会社が評価システムを構築し、プレイヤーの年齢に合わせて制限を設けることが必要だ。ソニーは暴力の描写などを含むゲームについては、購入者の年齢制限を設けている。ソニー製のゲーム機には、親が操作するコントロールシステムが搭載され、子どものプレイ時間を制限できるようになっている」と話す。
異なる意見を述べる企業もある。報道によると、米国のエンターテインメントソフトウェア協会(ESA)、欧州の欧州ゲーム開発者連合会(EGDF)、またオーストラリア、韓国、南アフリカ、ブラジルなどのゲーム産業団体が共同声明を発表し、「WHOがゲーム依存を疾患に分類した根拠は不十分であり、改めて審査を行うことを願う」としている。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年6月19日