昨年開かれた第1回中国国際輸入博覧会(輸入博)では、468企業・団体が出展した日本。日本貿易振興機構(ジェトロ)は日本の中小企業など260社・団体の出展をとりまとめ、ハイエンド、食品・農産品、医療機器・医薬保健、サービス貿易、日用品および服飾エリアにジャパンパビリオンを組織し、会期中のジャパンパビリオンにおける成約件数は3,037件、成約金額は約58億円に上った。10日まで開催中の第2回輸入博においても、日本全体で約380社・団体が出展し、国別では最大規模となっている。人民網が伝えた。
人民網のインタビューに応じるジェトロ上海代表処の小栗道明首席代表・所長(写真右)。
今年、ジェトロは昨年分野別で特に高い成果を上げた「食品・農産品」と「医療機器・医薬保健」の2つのエリアでそれぞれ108社と50社、計158社の企業・団体のとりまとめを行った。ジェトロ上海代表処の小栗道明首席代表・所長は人民網の取材に対して、その来場者の多さからしっかりとした手ごたえを感じただけでなく、「実際、食品でも目標にしていた額の半分近い金額の商談見込みがこの2日間で出ている上、医療についても、大きな商談がいくつか行われていると聞いている」とし、「昨年と比べ運営が改善され、スムーズになってきている。昨年は第1回ということもあり、運営面で行き届いていないと感じた点もあったが、今年は会場内の表示なども非常にわかりやすくなっており、企業の出展に対するバイヤー誘致にも非常に力を入れていると感じている」と評価した。
輸入博開幕前にジェトロが発表したプレスリリースで、中国の高齢化に着目し、介護ケア分野でのPRを行うとしていたように、中国では一歩先に高齢社会に突入している日本に学びたいという意欲が非常に高まっている。実際、中日両国の政府間でも昨年から高齢者に関する活動が広がってきており、ジェトロでも北京や上海、広州といった大都市だけでなく、内陸の成都市や重慶市、山西省大原市といった地方都市を含む中国各地で高齢者ケアに関するマッチングといった機会を設ける活動を展開している。小栗所長も、「こうした中国側のニーズの高まりに応じて、日本企業側もそこに大きなビジネスチャンスを見つけていると思う」との見方を示した。
ジェトロの「医療機器・医薬保健」エリアのジャパンパビリオン。
また中国では近年、越境ECが急速な発展を遂げており、そこにビジネスチャンスを見出す日本の中小企業も増えている。実際、ジェトロでもこの2年ほどは越境ECに関わる相談数が目に見えて増えているということで、越境ECプラットフォームの販売者と日本の中小企業のマッチングの機会を設けたり、変化の激しい中国の越境EC事情に関する情報提供などを行うなど、非常に力を入れて取り組んでいる。今回の輸入博でも展示ブースの中に生中継エリアを設け、日本の中小企業の商品を紹介するという取り組みを行っていた日本企業もあったという。その一方で小栗所長は、「越境ECというのは一面、非常に楽なように見えるが、当然ながらマーケットのことをよく知らないと、ただ単に製品が優れているからといって、売れる訳ではない。また売り方を間違えると、値崩れを起こしたり、ブランドの価値を棄損してしまうといったようなリスクもある。その意味でも単純に越境ECだけを推奨するのではなく、市場のニーズに合わせた形でビジネスを展開していくことの重要性を伝えている」との見方を示した。
昨年の輸入博に引き続き、中国は開放の扉はより大きく開くのみというメッセージを発信しており、小栗所長も、「開放を本気で進めていると強く感じている」としつつも、「一方で日本から中国を見ていると、多くの日本企業には中国の開放の思いがまだまだ伝わっていない部分があるのではないかと感じている」とした。そして1978年からスタートした中国の改革開放にいち早く呼応して、その中で大きな役割を果たしてきた日本企業に対し、「現在進められている本当の意味での改革開放においても大きな役割を果たし、ビジネスチャンスをつかんでいってもらいたい」との思いを語った。現在、中国はまさに成長のスピードを追求する時代から、質を求める時代へと転換しつつあり、むしろ日本企業にとってのチャンスは広がっているとの見方を示し、「開幕式で習近平国家主席が、中国市場はこんなに大きい、世界の皆さん是非中国に来て、もっと見てくださいといったメッセージを発信した。これは私にとって今回一番印象に残ったメッセージ。中国が一方的に開放するだけではやはり互いの交流は成り立たない。日本を含む世界の人々がもっと中国にたくさん来て、その現実を見て、交流し、それによってビジネスが発展していくことが重要だ」とした。(文・玄番登史江)
「人民網日本語版」2019年11月9日