このところ人民元の対米ドルレートが大幅に上昇し、注目を集めている。昨年5月にはレートはまだ1ドル=7.1元だったが、1年後の今ではすでに6.3元の時代に突入した(1ドルは約109.1円、1元は約17.1円)。中国新聞網が伝えた。
中国外国為替投資研究院の譚雅玲院長は人民元レート上昇の原因について、「人民元値上がりはドルインデックス(ドル指数)の低下と関係があり、市場が人民元上昇のムードに大きく傾いていることもある。また、中国経済が回復を続け、外資が中国の外国為替市場と株式市場に流れ込んでおり、外資が有利なタイミングで価格差を利用したサヤ取り(アービトラージ)やヘッジを行なう現象がよくみられることなども、人民元の値上がりを後押しした要因だ」と分析した。
データによると、5月25日にA株が大幅上昇し、取引高は再び1兆元の大台に達し、香港市場から大陸部市場に向かう資金が過去最高を更新した。
中金宏観が26日に発表した研究報告書によれば、4月以来、人民元対ドルレートが上昇を続け、5月25日現在で、累計上昇幅は2.5%に達し、中国外貨取引センター(CFETS)の人民元レート指数も4月初めに比べて0.5%上昇した。さらに同期には、ドルインデックスが約3.5%低下した。ドルインデックスの低下は最近の人民元対ドルレート上昇を推進した重要な要因だ。
中金宏観によると、3月に米ドルが値上がりした時に海外機関の保有する中国の債券は小幅の純減となったが、4月には買い増しに転じたことも4月以来の人民元上昇を後押ししたという。
今後も値上がりは続くか?
中金宏観は人民元レートの動きについて、「短・中期的には、米ドルが変動しながら値下がりするのを受けて、人民元対ドルレートはドルの動きによって双方向に変動するだろう。また下半期を見通すと、10月から中国国債が英指数算出会社FTSEラッセルの世界国債インデックス(WGBI)に段階的に組み入れられるため、受け身の資金流入がもたらされるだろう。しかし世界の回復が進み、外部の生産能力が回復し、輸入価格が上昇するのにともなって、経常収支の黒字は2020年を下回るとみられ、成長の原動力は鈍化する可能性がある。人民元がさらに値上がりする可能性は限定的で、ある程度の揺り戻しのリスクには警戒が必要。しかし、人民元の下方圧力は大きくないと判断する」との見方を示した。
譚氏も、「今後しばらくの間、人民元レートが引き続き大幅に値上がりする可能性は大きくない。今回の人民元上昇は比較的長く続いており、周期的にみてもこの傾向が修正される時期に来ている」との見方を示した。
中国人民銀行(中央銀行)の劉国強副総裁は5月23日、人民元レートの問題について質問に答える中で、「今年に入ってから、人民元レートは上昇することも低下することもあり、双方向に変動しつつ、合理的でバランスの取れた水準で基本的安定を維持してきた。現在、中国の外国為替市場は自律的にバランスを取り、人民元レートは市場によって決定され、レートへの期待は安定している。今後の人民元レートの動向は、引き続き市場の供給と国際金融市場の変化によって決まり、双方向の変動が常態になるだろう」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年5月27日