ボディーガードというのは、常にミステリアスなベールに包まれた業界と言えるだろう。古代においては武術の達人や英気みなぎる侠客など、海外であれば、がっちりした体つきで武器を巧みに使いこなす用心棒といったように、人によってボディーガードのイメージは異なるかもしれないが、「人並み以上の能力を備え、鋭い洞察力がある存在」というのは、一致したイメージかもしれない。中央テレビ網が報じた。
「しっかり前を見て!」、「左ストレート、右ストレート、キック!」と女性特有の高いトーンの声でこうした指示を出しているのは、女性ボディーガードの張美麗さん(21)。背はそれほど高くないものの、その動きはとても機敏だ。北京郊外のある警備会社で行われている第52期ボディーガード合宿では、中国各地から来た男女38人が2ヶ月にわたる特訓を受けている。訓練生の年齢は18歳から46歳までと幅広く、退役軍人のほか、体育学院の卒業生や企業の警備責任者など、その背景もさまざまだ。
四川省自貢市出身の張さんは、一世を風靡した映画「少林寺」をこよなく愛しているほか、とてもエネルギッシュな性格で、12歳の時に武術を習いたいと思うようになったという。
2017年、張さんは、とびぬけて優秀な成績で成都体育学院の散打学部に入学。2020年に卒業すると、ボディーガードになることを志し、北京に移り住んで、引き続きその「修行」を続けている。
北京で行われたボディーガード合宿で、張さんはキックボクシングや格闘術、特殊運転技術、情報偵察スキルなど、100項目以上の厳しい訓練を受けた。そして、「あどけなさが残る女性」から次第にプロの「女性ボディーガード」へと成長しただけでなく、この安全防衛訓練機関の教官としてオファーを受けた。
女性ボディーガードは、パワーや持久力といった面で、生まれつき男性に及ばないため、練習には男性以上のエネルギーを必要とするだけでなく、様々な苦労も多い。例えば、生理中も変わらず厳しい訓練を受けなければならないなどだ。
しかし、張さんは女性ボディーガードには、目立ちにくく、現場の空気を和ませることができるほか、細かな点まで気配りでき、用心深く、男性よりも身軽で素早い動きができるといった長所もたくさんあると考えている。
個人の身辺警護を行うボディーガードは、要求される能力によって3ランクに分けられる。まず、初級ボディーガードは、車を運転し、追跡を阻止し、格闘術に精通していなければならない。中級ボディーガードは、秘書的な能力を備えているだけでなく、ビジネス活動を処理し、コンピューターを操れなければならない。そして上級ボディーガードは、外国語ができるほか、セキュリティープランの策定から、クライアントのスケジュール調整までできなければならないとされている。張さんは、「ボディーガードは、あくまで守ることが目的であり、武器を使い先制攻撃をすることはできない。プロのボディーガードは、スキルと知恵で自分と護衛対象を守り、発生する可能性のある全ての危険を回避しなければならない」としている。
優秀なボディーガードになるためには、少なくとも1年から3年ほどの厳しい訓練と実地訓練が必要であるほか、犯罪心理学に通じ、心理戦にも長けていなければならない。また、非常に緊迫した緊急事態にもパニックになることのないメンタルの素質も備えていなければならない。