蘇席さん(17)は中学生の時から博物館や文化財、伝記といった歴史感あふれるものが好きになり、歴史ある文化財を通して、数百年、数千年前の人々の感情や人生経験を想像したり、感じたりするのが好きになったのだという。そんな彼女は、趣味を「専門分野」にしたいと考え、両親の同意を経て、中国大学統一入学試験(通称「高考」)の第一志望に西北大学の考古学学科を選んだ。工人日報が報じた。
いつの時代も、考古学や文化・博物、無形文化遺産伝承といった学科は、人気のないニッチな学科の代名詞となってきた。しかし近年は、一部の若者の第一の選択肢となっている。北京師範大学試験・評価センターが以前に実施、発表した「00後(2000年以降生まれ)の高考志望動向報告」の人文学科の分野を見ると、学生が最も興味を示している学科トップ3は歴史学、文化財・博物館学、考古学となっていた。
試験の結果を待っている河南省の理系の受験生・関玥さんは、志望学科を記入する際に、親戚や友人たちから電気工学自動化系の学科を選ぶよう勧められたという。その理由は、就職のチャンスが多いからだ。しかし、彼女の目標は敦煌研究院に就職することであったため、迷うことなく文化財保護技術を選んだという。
農村出身の関さんの両親は夢を追いかける彼女に反対することはなく、父親は彼女の誕生日に、書籍「我心帰処是敦煌」をプレゼントしてくれたという。また、志望学科を記入する際、学歴がそれほど高くない母親も、「自分が好きなことを勉強して、努力して目標を達成したらいい」と言ってくれたという。
安徽省の受験生・張聖嫻さんの第一志望は、雲南芸術学院の無形文化遺産保護だ。彼女がそれを選んだ理由は、歴史に興味があり、文化財修復の過程が好きだからだ。「破損した歴史ある文化財が修復されるのを見ると、深い達成感を感じる」と張さん。
張さんは、「卒業後の前途が明るくなく、仕事を見つけるのが難しいと考える両親は初め反対していた。でも、私はこの学科が大好きなので、『この業界は多くの働き手を必要とはしていないが、誰かがしないといけない。ちゃんと勉強すれば、仕事には困らない』と両親を説得した。すると、しぶしぶ同意していた両親の態度が少しずつ変わり、応援してくれるようになった」と話す。
趣味を生かして将来の見通しも明るい考古学系学科
中国人民大学歴史学院の考古学・文化・博物学科の曹斌准教授は、「考古学及び関連の学科は、あまり人気がないものの、就職は決して難しくなく、仕事も安定している」とする。
国家文化財局が5月18日に発表した最新統計によると、2022年、中国で新たに届出があった博物館は382館で、中国全土の博物館の数は6565館と、世界ランキングで上位に入っている。2012年の3069館と比べると、2倍以上増えたことになる。文化・観光部(省)の関係責任者によると、第14次五カ年計画(2021‐25年)期間中、考古学学科やそのチームビルディングの強化に取り組み、2025年をめどに、文化財科学研究者の数を25%増加させるという目標が掲げられている。
浙大城市学院の考古学学部の杜正賢主任は、同学科の就職動向を楽観視しており、「現時点で、中国全土の学部、修士課程、博士課程の考古学学科の卒業生は1年当たり2000人ほどにとどまっている。しかし、中国全土の考古学専門機関はそれ以上の数の人材を必要としている。そのため、この学科を志望するというのは、単に趣味が高じたというわけではなく、現実的な条件が下支えとなっている」との見方を示す。
杜主任は、「考古学や文化・博物、文化財修復、無形文化遺産伝承といった学科はとてもおもしろい。考古学系の仕事の環境もどんどん良くなっている。昔のように、太陽の照る屋外で風に吹かれながら作業をしたり、食事をしたりしなければならないという過酷な仕事ではなくなっている。学生は、学べばさらに伸びる得意分野を活かし、教科書を通して学んだ知識を日常生活で活用することさえできれば、なにも悩む必要はない」としている。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年7月18日