中国は「海中総合戦略」の策定を急げ
100年余り前に米海軍の戦略研究者マハンが「制海権」理論を打ち出した。強大な海上艦隊を構築し、重点地域に海外基地を設け、海面上の空間を重点的に争奪するというのがその核心だ。だが冷戦後、軍事技術と兵器の発展に伴い、海中および海底の戦略的重要性が増し、海中の戦略的利益の争奪も激しくなっている。中国は「海洋強国」を国家発展の戦略目標として掲げており、「海中総合戦略」の策定が喫緊の課題となっている。(文:韓旭東・国防大学教授。環球時報掲載)
軍事闘争の変遷を見ると、人類の争奪する戦略的利益は地上、海上から空、そして宇宙へと発展してきた。人類は宇宙競争と同時に海中および海底の利益の争奪も始めた。海中資源はすでに国家発展の重要な柱となり、人類の発展に対する影響力を増している。したがって海中および海底の国益をいかに守るかという問題を、国家戦略のレベルにまで引き上げるべきだ。
海中および海底は大国の角逐の新たな舞台となりつつある。能力を備える国は自国の海中および海底の戦略資源の安全を守ると同時に、世界全域の公有の海中および海底の戦略資源の争奪も繰り広げている。このうち最も際立っているのが北極海での争奪だ。中日の「釣魚島(日本名・尖閣諸島)をめぐる争い」における日本の戦略的企ての1つが、海中および海底の資源をより多く占有することにある。
この他、いくつかの国々は海中兵器の発展に全力を挙げて海中空間の主権を争奪している。例えばロシアは世界最先端のボレイ型原子力潜水艦の試験を行なっており、2020年までに少なくとも10隻を配備する計画だ。この原潜が一定数配備されれば、ロシアの海中支配能力は大幅に強化される。ロシアは今月中に全く新たなコンセプトの海底ミサイルの実験も計画している。このミサイルは平時には海底に配備され、戦時には上空に打ち上げられて地上または海上の目標を粉砕する。
米国も海中総合戦略を積極的に展開している。例えばカリフォルニア州沖の海底に「ポラリス」や「ポセイドン」などミサイルおよび核兵器の実験場を設け、フロリダ州マイアミ南東沖の海底に「大西洋海中実験・評価センター」を設け、潜水艦と海中兵器の実験を行なっている。軍事技術の発展に伴い、海底ミサイル・衛星発射基地、潜水艦海中補給基地、海中兵器実験基地、海中兵器生産基地、海中指揮センターなど海底に建造される軍用施設が増え続けている。
海中および海底は中国の国益を守るうえでの1つの「ボトルネック」となりつつある。海洋強国は海面、海中、海底の戦略資源を有効に支配し、利用するとともに、その安全を守ることができなければならない。深海潜水艇「蛟竜」は世界トップレベルだが、わが国の海中競争力は全体的に見るとやはり弱い。「海洋強国」という戦略目標を達成する過程において、われわれは「海中総合戦略」を策定して、「持続可能な発展」という根本的な戦略目標を達成しなければならない。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年7月18日