787型機トラブル、日航機以外でも 米紙報道
【ニューヨーク=中井大助】日本航空のボーイング787機が米マサチューセッツ州ボストンのローガン空港に着陸後、火災を起こした問題で、米国家運輸安全委員会(NTSB)は8日、ボストンに追加の調査官を派遣し、本格的な調査を始めた。同型機ではトラブルが相次いでいる。
NTSBのこれまでの調査では、機体後方の電気室内にある補助動力用のバッテリーが激しく焼損しており、バッテリーの周囲約50センチの機器類などが熱による損傷を受けた。また、煙が探知される直前には、整備員や清掃員が機内におり、バッテリーが稼働中だったという。
NTSBは米連邦航空局(FAA)やボーイング社と共同で安全性や火災原因についての調査を進める方針。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、2010年にボーイング社のテスト機が電気系統の火災により緊急着陸。また、昨年12月、米ユナイテッド航空の同型機が電気系のトラブルで緊急着陸したほか、カタール航空でも似たトラブルがあったという。
同紙は、ボーイングが787の生産を増やそうとしている時期なだけに、火災が影響する可能性を指摘。「(火災は)787の革新性の本質にもつながる」という航空コンサルタント会社関係者の話を伝えた。
また米国の航空評論家のヘンリー・ハートベクレトさんは8日、米ブルームバーグの取材に「細かい不具合がある新型機と、問題のある新型機の間には細い境界線があるが、787は問題の方に向かって線を渡っていると懸念する」と答えた。別の専門家も「残念なことに、機体はそのパフォーマンスや安全面ではなく、問題で知られるようになっている」と語った。
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〈ボーイング787〉 米航空大手のボーイング社が製造する最新鋭の飛行機。200-300人の旅客を運ぶ中型機で、1回の給油で飛べる距離が、ほぼ同じ大きさの「767」に比べて約4割延びた。
全日空が世界に先駆け、2011年10月に営業運航を始めた。東京?ニューヨークといった長距離路線も飛べるため日本航空、全日空とも、大型機では席が埋まりにくかったボストンなど欧米の中規模都市路線に投入を進めている。現在、日航が7機、全日空が17機飛ばしており、海外の大手航空会社も導入している。ボーイングによると、現在全世界で799機の受注残がある。
機体の材料の約5割に東レの炭素繊維の複合材を使う。機体がさびる心配が少なく、客室内の湿度を高め乾燥を防ぐ効果もある。主翼は三菱重工業が担い、川崎重工業や富士重工業も機材を納めるなど日本メーカーの貢献が大きい。
asahi.com 2013年1月9日
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