2017年5月、韓国ソウルで記念撮影する飯塚氏と余華氏。
中日両国の相互交流と学習を重視すべき
中国作家協会は2010年から、2年に1度、「中国文学者文学翻訳国際セミナー」を開催している。同セミナーは、世界各国の翻訳家が交流したり、翻訳家が中国の作家と交流するプラットフォームとなっている。飯塚氏は今年8月に中国の貴州省貴陽市で開催された第5回セミナーを含めて、同セミナーに毎回参加している。それ以外にも飯塚氏は、中国文化部(省)が開催する「中国文学者・中国と海外の文化交流座談会」や中国出版集団が開催する「中国文化国際PRフォーラム」などにも参加したことがある。「それらイベントには大きな意義があり、中国文学が海外進出するうえで一定の役割を果たしているため、どんどん開催すべきだ」と飯塚氏。
飯塚氏は中国であっても、日本であっても、今の人々は欧米諸国との文化交流を重視し、中日両国の相互交流や相互学習がないがしろにされていると感じており、このような現象に寂しささえ感じるという。中日間には長い文化交流の歴史があり、共通の価値観や文化的遺伝子をもち、両国は相互学習する過程で目覚ましい進歩を遂げてきた。そのため、飯塚氏は、「西洋文化を一心に追いかけるより、日中両国は互いに相手のメリットに目を向け、東洋人に合った美的理念や表現方法を見つけて、東洋文化に対するアイデンティティや自尊心を取り戻さなければならない」と指摘する。
日本人が再び中国文学に注目できる環境づくりを
中国の現代作家の中でも、飯塚氏は余華氏との親交が深いという。これまでに、飯塚氏が翻訳した中で、最も多いのが余華氏の作品だ。余華氏が新作を発表するたびに、飯塚氏は翻訳の機会を得ることができないか模索するのだという。第5回中国文学者文学翻訳国際セミナーで、飯塚氏は90年代に余華氏から受け取った手紙に触れ、「現在、日本では中国文学がどの程度紹介されているのかはっきり分からない。しかし、中国の現代文学はずっと安定して成熟に向かっているということは、自信を持って言える。中国の作家は21世紀には世界の文学界を驚かせることができると信じる」と書かれていたと紹介した。飯塚氏は余華氏のこのような真摯な態度や情熱に動かされ、彼の作品を次々に翻訳するようになったという。
また飯塚氏は、中国の文芸雑誌「人民文学」の日本語版「灯火(ともしび)」の翻訳監修を務めている。2015年に創刊された「灯火」ではこれまでに、日本語に翻訳された中国の作家数十人の短編小説や詩が掲載されてきた。飯塚氏は、「灯火」の発行がこれからもずっと続いていくことで、中国の作家が日本でも輝くことのできる舞台となり続けることを願っている。
「人民網日本語版」2018年9月27日
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