このほか、ストーリーを展開させるシナリオ技術もかなり手慣れている。毎回起こる殺人で小さな盛り上がりを作り、数週ごとに大きな驚愕を用意し、そこに怖がらせたりユーモアで笑わせたりするパートを挟むことで、視聴者の感情をうまく操り、テンポを作っている。ドラマに登場する住民たちをいちいち覚えていない視聴者でも、ドラマが進むうちに、だんだんと人物設定や謎解きの特徴を把握できるようになる。そして、映像化ならでは撮影手法も、ミステリーの表現力を高めている。のぞき見しているようなぼやけた画面、さまざま視点の切り換えによって、真相と虚偽、あるいは叙述トリックの説得力がさらに高まっている。よく見れば謎が解けるヒントを残した画面処理をすることで、繰り返し見るうちにハッとわかる瞬間を視聴者にもたらしている。これにより、頭を使った謎解きに重きを置いた本篇はほぼ大成功を収めたと言ってよい。
動機の分析や人物の解明といった面では、制作側はスピンオフドラマ「扉の向こう」を制作。ドラマ本編と同時配信という形で、本篇に登場する住民たちの生活について描いている。本篇が頭を使った謎解きだとすると、番外編は心に訴えかけるものだ。ドラマの登場人物は、本篇では非常識で怪しげに見えた行動も、毎回配信される独立したストーリーによって、よりはっきりと理解できるようになっている。例えば、永遠の嫁姑問題、最初は幸せいっぱいだったのに不妊問題で冷え切っていく夫婦愛、息子だけが生きがいのワーキングマザー、「隣の芝生は青い」と思っている純真そうに見えて実は心に悪意を抱えた女性、同僚に嫉妬し下品で憎たらしいのに他人からは同情される独身男性などについてのストーリーが展開される。
人間性というのは複雑かつ微妙で、屈折したものだ。番外編では、さまざまな日常生活の細部を描くことでそれを徐々に浮き彫りにしていく。各登場人物のイメージも、こうしたなじみのあるシーンによってより立体的に活き活きとしてくる。またそれにともなって、殺人の動機や悪意が芽生える理由も合理性があり推し量ることができるものになる。
こうした番外編同時配信という手法を取ることで、本編がよりシンプルなものになり、自分で答えを探りあてられる機会を視聴者により多く提供している。だが、番外編の役割はこれだけにととどまらない。それ自身の独立性によって、番外編だけでも非常に素晴らしい作品になっている。今のところ、番外編の評判が本編より高いことがこの事実を証明している。(編集KM)
「人民網日本語版」2019年6月27日