日本で開発されたアルツハイマー病新薬が中国に導入か

人民網日本語版 2019年08月09日14:47

人々の寿命が延び、社会が高齢化していくにつれて、認知症が社会問題となっている。認知症のタイプの中で最も多いとされているのが、アルツハイマー病によって起こるアルツハイマー型認知症だ。

北京市の産業発展促進会で7日、日本のNeSA合同会社医薬開発コンサルタント・日本医科大学名誉教授で医学博士の西野武士氏、鳥取大学医学部附属病院診療教授・神経病理診断科長の加藤信介氏、北京大学第三医院神経内科主任医師の肖衛忠氏ら日中の医学専門家による座談会が行われ、アルツハイマー病予防・治療、新薬研究開発、両国学者間の相互理解・学術交流促進について討議が行われた。中国産業発展促進会や日中産学官交流協会など関連機関の代表らも今回の座談会に参加し、日本で研究開発された新薬の中国での臨床試験や導入などについて意見を交換した。

アルツハイマー病の進行過程

野武士氏によると、アルツハイマー病患者の脳では、まずアミロイド蛋白に次いでタウ蛋白が沈着し、その後脳萎縮が始まり、記憶障害が起こる。さらに進むと臨床症状が現れるようになる。西野氏は研究の過程で、アミロイド蛋白とタウ蛋白の沈着を抑制できる成分を発見し、この成分がアルツハイマー病治療薬として有効であると考えた。アルツハイマー病モデルマウスに対しこの成分を投与したところ、アミロイド蛋白沈着の遅延、タウ蛋白沈着の遅延、アルツハイマー病行動進行の遅延がみられた。このアルツハイマー病モデルマウスは鳥取大学医学部附属病院診療教授の加藤信介氏が世界で初めて生み出したもので、ヒトアルツハイマー病の病理的特徴である老人斑と神経原線維変化と同一の構造物を持っている。

NeSA合同会社医薬開発コンサルタント、日本医科大学名誉教授の西野武士氏

鳥取大学医学部附属病院診療教授の加藤信介氏

報道によると、アルツハイマー病は世界で治療薬開発の成功率が最も低い疾病だという。成功に至らない原因について西野氏は、従来のアルツハイマー病治療薬はアミロイド蛋白とタウ蛋白を取り除くことに重点を置いていたからだと考えている。一方、西野氏らが開発した新薬は、アミロイド蛋白とタウ蛋白の沈着を抑制することに重きを置いている。

西野氏によると、アルツハイマー病に罹患すると脳が委縮していき、元の状態を回復することは難しい。したがって、早期発見と早期治療がカギとなる。西野氏の研究チームが開発した新薬は病状を遅らせることを重視している。新薬は患者の生活の質を大きく改善するだけでなく、家族や社会の負担を軽減し、社会的経費の削減につながる。西野氏らはこの新薬の臨床試験を中国で行う計画を進めており、座談会ではその可能性や具体策についても意見交換が行われた。

中国産業発展促進会副会長の李小軍氏

中国産業発展促進会副会長の李小軍氏は座談会で、「近年、中国は健康や保養といったテーマを非常に重視している。8月5日、国務院弁公庁は21部門・委員会からなる養老サービス部門間合同会議の設立を許可する文書を発した。同文書は「この合同会議は公章を持たず、公式通達も出さない」としており、これは重要なシグナルでもある。この措置により、国内外の先進的医薬や技術の中国における応用が大きく後押しされることになるだろう。協会では中日の専門家に対し交流と協力の場を提供し、国民の健康に役立つプロジェクトが実施され、技術が応用されるよう促していく」と述べた。

アルツハイマー病は最もよくみられる認知症タイプで、認知症の60%以上を占めるという。中国のアルツハイマー病患者はすでに1千万人以上と、世界最多となっており、しかも年間30万人以上のペースで増えているという。(編集AK)

「人民網日本語版」2019年8月9日

  

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