有名な心理学者のバラス・スキナーはかつて次のような理論を提起した。人や動物は何らかの目的を達成するために、一定の行動を取って環境に作用を及ぼす。その行動の結果が自分にとってプラスであった時には、その後もその行動を繰り返す。結果がマイナスであった時は、その行動はあまり行わなくなるか、まったく行わなくなる。人はこうしたプラスの強化またはマイナスの強化という方法で行動の結果を左右することができ、自分の行動を修正することができる。ゲームはスキナーの理論をある程度柔軟に応用したものといえ、だからこそ「ゲーム化」したライフスタイルが、人々の日常生活を変える可能性をもち得たのだ。
2015年、知識サービス企業の羅輯思維は社員40人のスタートアップ企業に過ぎず、ほぼ全社員がいくつかの仕事を掛け持ちしていた。会社は社員の積極性をかき立てるため、自分を助けてくれた人にプレミアのついた商品券を贈る「節操幣」と名付けた管理モデルを生み出した。表面的には、給料以外の福利厚生や補助のようだが、実際の操作の中ではゲームにも似た独特の使われ方をしている。
羅輯思維は全社員に毎月10枚の「節操幣」を支給し、1枚あたり25元の価値があり、会社の周辺で利用できる。ただ自分に支給されたものを自分で使うことはできず、誰かに贈るか、誰かに贈られたものを使うしかない。誰かに助けてもらった時に自分の手元にある「節操幣」を贈り、理由を明確に伝える。1年間に最も多くの「節操幣」を受け取った社員は、年末に給料の3ヶ月分のボーナスを支給される。この独自の制度は、スタートしてすぐに社内で実際的な効果を上げた。同社の共同創業者の李天田さんは、「もらった節操幣が少ない社員は、ものすごいプレッシャーを感じて、すぐにも自覚的に行動を改善するか、会社を辞めることになる」と話した。
「即時フィードバック」を導入したこのようなゲーム化されたメカニズムを導入して効率的なプラスアルファを達成できるのは、仕事だけでなく、参加者を「激励」することで促進できるすべての事業もそうだといえる。ある意味で、現在非常に流行っている環境保護促進アプリ「アント・フォレスト」は、「ゲームの公益化」の典型例だ。「アント・フォレスト」の公式データによると、これまでに1億人を超えるユーザーが「アント・フォレスト」システムを通じて本物の樹木を1億2200万本植えて、中国の炭素排出量を累計1100万トン削減した。これほど多くの人が「アント・フォレスト」に夢中になる重要な原因として、このアプリがユーザーに豊かな双方向交流と直感的な「即時フィードバック」を与えることが挙げられる。