楽し気な音楽が流れるなか、唐の時代の衣装に身を包んだ十数人の女性ダンサーが戯れ、夜の宴に向けた出し物の準備をする。河南衛星テレビ春晩(春節<旧正月、今年は2月12日>を祝う中国の年越し番組)のダンス演目「唐宮夜宴」が大好評を博している。この5分余りのダンスは、唐代の女性が身づくろいや化粧をし、夜の宴で演奏するまでを描いている。さらに水墨画が舞台美術として採用され、「婦好鴞尊」、「蓮鶴方壺」、「賈湖骨笛」、「簪花仕女図」などの文化財が舞台上に登場。唐の女性たちの不思議なミュージアムナイトツアーといった趣きとなっている。成都商報が伝えた。
多くのネットユーザーが「まさに絵の中の人物が蘇ったようだ」、「『唐宮夜宴』が広く好評を博しているが、これは完全に美の古今融合だ」といったコメントを寄せ、河南春晩の「唐宮夜宴」を高評価している。
紹介によると、このダンス演目は2020年鄭州歌舞劇院の第12回中国舞踏荷花賞の応募作「唐俑」にアレンジを加えたものだ。女性ダンサーはその艶かしく優雅に舞う姿で、唐の最盛期をそのまま舞台上で再現している。視聴者はダンスを鑑賞すると同時に、豊かな中国の歴史と文化を実感できる。
河南春晩の総合演出を務めた陳雷氏は、「実を言えば、このプログラムが広く好評を博するとは完全に予想外だった。春晩を企画した当初、その他の地方の春晩との差別化を図るため、制作スタッフは新たな試みをすることにした。中原文化を立脚点とし、それをトレンド感があり若者が好む形式でアレンジした。結果から見れば、この試みは成功だった」と述べた。
陳氏は、「唐宮夜宴」で制作チームが伝えたい思想を表現したと述べた。「国宝、『国風』、『国潮』など多くの要素が溶け込んでいる。国宝というのは、『婦好鴞尊』や『蓮鶴方壺』、『賈湖骨笛』、『簪花仕女図』などの文化財。中国風であることを示す『国風』と中国の伝統要素を取り入れたおしゃれな国産品のトレンド『国潮』は、演目全体の雰囲気と舞台美術に取り入れられている。こうした要素を表現するに当たり、時代が新たなものを必要としていること、また新たな表現方法により若者をけん引し、新たな形式により若者に先祖が残した宝を見てもらう必要があることも考慮した」と陳氏は言う。
陳氏は、「唐宮夜宴」がヒットしたもう一つの重要な理由は、伝統文化と新時代の生活の間に結合点を見いだしたことだと述べた。「唐の女性が戯れる光景は親しみやすさを感じさせる。彼女たちの動きや仕草は今の女性たちと変わらないと感じられる一方で、まるで歴史の中から蘇ったようだとも感じられる。どの時代であっても人というのは変わらないものだと考えてみることはできる」。ネットユーザーが「唐宮夜宴」に親しみやすさを覚えたと評価し、「あの女性たちの姿は、現代の朝の通勤ラッシュにおける私たちと同じだ」とコメントしているように、古代と現代との時間的なつながりを感じさせたことも、陳氏が「唐宮夜宴」は成功したと考える理由だ。
豊満だった唐代の女性を表現するため、ダンサーたちがスポンジを詰めた衣装を着用し、口の中に綿を含んでいたことも注目に値する。また頬に2本の弧を描くことで、唐の女性の間で流行した化粧「斜紅」を完全に再現した。
2021河南春晩の芸術監督を務めた李暄氏は、「単なるダンス作品であれば、『唐宮夜宴』がこれほど大きな影響力を持つことはなかったはずだ。仮想現実(VR)技術を使い、時間と場所の変化を通じダンス作品全体をパートごとに場面転換し、さらに中国の山水といった一連の馴染み深い文化的シンボルと結びつけた。表現方法を革新したことで初めて、伝統文化が本来持っていた大きな魅力を呼び覚ますことができた」と述べた。(編集YF)
「人民網日本語版」2021年2月20日