科学技術部(省)と上海市政府が主催する浦江イノベーションフォーラム2021の総会が3日開かれ、中国工程院の陳薇院士が出席し、講演を行った。科技日報が伝えた。
昨年3月9日に新薬臨床試験申請を出し、同月16日に正式に臨床試験が始まり、5月22日に世界で初めて新型コロナウイルスワクチン臨床試験データを発表し、今年2月25日に国家薬品監督管理局が条件付きで承認を出した。陳氏は「中国で初めて承認された遺伝子組み換えワクチンであり、現在唯一の1回接種型の新型コロナワクチンでもある」と述べ、遺伝子組み換え新型コロナワクチンの研究開発と承認のプロセスを振り返った。
陳氏は「新型コロナワクチンが最初に武漢で使用されたことは、我々に科学研究の大きな自信をもたらした」と感慨深げに語った。
陳氏は、科学研究の大きな自信は長年の蓄積と国の科学技術への持続的な資金投入によるものと見ている。
「2018年は中国の免疫計画実施40周年で、毎年の国産ワクチンが10億回分にのぼり、自給自足が実現された。国産ワクチンは計画全体の免疫と感染症対策の面で代わることができない役割を果たした」と陳氏。
新型コロナワクチンを迅速に開発できたのは、国による持続的な科学技術への資金投入のおかげだ。陳氏によると、科学技術部は「863計画」から、ワクチン研究開発に対して大量の経費を投入してサポートしている。「現在作っているアデノウイルスの新型コロナワクチンは、2003年に863計画の資金援助を受けており、エボラウイルスの頃から開発を開始した」。陳氏は、「アデノウイルスベクターはロケットのようなもので、どのワクチンを作るかはどの宇宙船を搭載するかに相当する。このロケットがあれば、どの宇宙船でも打ち上げやすくなる」と説明した。
人々が関心を寄せている変異ウイルスのワクチンへの影響について、陳氏は「現時点でワクチンへの影響が比較的大きいのは南アフリカで見つかったベータ株だ。チームはベータ株についても臨床申請を行っている。変異株によりワクチンの免疫力を高め、変異株をカバーしたい」と述べた。
また陳氏によると、チームは注射と冷凍を必要としない非注射型・非冷凍型ワクチンの研究を進めている。「現在のワクチンはどれも注射型だが、噴霧吸入型など別の方法による接種も可能だ。昨年8月に我々は最も早く非注射型ワクチンの研究結果を発表した。昨年9月29日に武漢で臨床試験を展開したのが吸入型だった」。
陳氏によると、噴霧吸入型ワクチンの量は注射型の5分の1しかない上、瓶詰めする必要もない。ワクチンの瓶というボトルネックも解消されるという。「現在打っているワクチンを噴霧吸入すれば粘膜に免疫がつく。国家薬品監督管理局は臨床拡大を認めており、我々は現在、緊急使用を申請中だ」と陳氏。
資料によると、いわゆる噴霧吸入型免疫とは、蒸発器によりワクチンを微小粒子状にし、呼吸し肺に吸引することで粘膜の免疫をつけることだ。そしてこの免疫効果は筋肉注射では得られない。通常、新型コロナワクチンの筋肉注射では、体液と細胞の免疫しかつかない。また噴霧吸入型免疫は痛みがなく、アクセシビリティがさらに高い。(編集YF)
「人民網日本語版」2021年6月4日