【ポイント4】アジアゾウはイヌが大嫌い
アジアゾウは、「攻撃される」と感じると非常に怒りやすい。オスは発情期が最も危険で、数十メートルから百メートル以内にいるものを「危険」と見なし、攻撃してくる可能性がある。そして子ゾウがいる群れは、子ゾウを守らなければならないという意識が非常に強いため、ちょっとしたことでも怒り出す。また、ゾウに反抗心を抱かせてしまうため、囲むようにして観察したり、追いかけたりすべきではない。ゾウが人間を攻撃しようとする時は、鼻を高く上げたり、耳を立てたりする。
アジアゾウにはイヌを特に嫌うという特徴もある。シーサンパンナタイ族自治州の多くのゾウはイヌを特に嫌っており、イヌを目にするや、踏み殺そうとするほどだ。これまでゾウが人を殺してしまったケースが何度もあったが、こうしたケースを調べたところ、どれもイヌがその原因だった。監視カメラの映像を見ると、イヌが吠えると、ゾウがやって来てイヌを殺そうとする。そして、ゾウに追いかけられたイヌは、飼い主に向かって走り出し、巻き込まれた飼い主もゾウに殺されてしまうといった具合だ。
【ポイント5】北上は自然な個体群分散の可能性も
保護区にしても、アジアゾウの生息地にしても、これらは人間の主観的な意向から、野生動物のために設定したエリアであることを忘れてはならない。しかしゾウのような大型の動物は、エサがあり、生存に適した場所であれば、どこでも生息地と見なす。そのため、人間の考えをアジアゾウに押し付けるというのは非現実的な話だ。
ゾウの北上は一つの傾向ともいえる。1997年ごろ、ゾウ5頭からなる1家族の群れがシーサンパンナタイ族自治州から、雲南省普洱市に移り住んだ。ゾウの群れが普洱市内に移動したのはそれが初めてで、その群れはそこからずっとその一帯に住み着いている。その後、シーサンパンナタイ族自治州から普洱へと移動するゾウが少しずつ増えていった。しかしこれらのゾウは、普洱とシーサンパンナタイ族自治州を行き来するだけで、それ以上遠くへは移動していなかった。
そのため、私たちも今回アジアゾウ15頭が普洱市の景谷県まで移動して初めて、「なぜこんなに遠くまで移動したのだろう?」と、警戒し始めた。以前にもこれほど遠くまで移動するゾウがいたが、単独での移動だったからだ。
今回のゾウの北上は、自然な個体群の分散である可能性もあるし、新たな生息地を求めて移動している可能性もある。当初は、エサの問題だと考えていた。しかし、今では、エサの問題だけではないと考えるようになっている。ゾウが今移動しているエリアには、シーサンパンナタイ族自治州ほど豊富なエサはないからだ。
シーサンパンナタイ族自治州のアジアゾウは、1980年代から90年代頃の約170頭から、少しずつ増加し、今では約300頭になっている。その個体群が一定の規模に達すると、野生動物は本能的に分散し、生存に適した新たな環境を探し求めるようになる。しかしその個体群が分散するからといって、シーサンパンナタイ族自治州のキャパシティーを超えたというわけではなく、そうしたエビデンスもない。
エサのほか、生息地には水源も必要となる。アジアゾウは水遊びをするのが好きな動物だからだ。また、生息地は小さすぎる場所でも、急な坂になっている場所でもだめだ。ゾウが普通に移動できるのは傾斜が30度ほどの坂で、それを超えると移動が難しくなる。ゾウが最も好むのは傾斜が10度以下の場所だ。その他、アジアゾウが生息しているのは、通常標高1000メートル以下の場所。1300メートルの場所に生息していることもまれにあるものの、それを超えることはほとんどない。今回は全くの想定外で、今は標高2000メートル以上の場所にいる。
【ポイント6】道に迷ったわけではない
これまでゾウは夜行性だと考えていたが、現状を見ると、昼も夜も活動している。ゾウの活動時間は1日18時間で、睡眠時間はわずか4時間ほど。日中にゾウを見かけることがますます増えている。これは人間に対する警戒心がますます弱まっているからだろう。
昔は太鼓を叩いてゾウを追い払っていたが、しばらくすると効かなくなり、爆竹を使うようになった。しかしその効果が続いたのもほんのわずかな間で、その後は花火を使うようになった。ゾウのいる所に向かって花火を打つと、初めは効果があったが、しばらくすると、花火を使っても攻撃してくるようになった。ゾウはとても頭が良く、そのIQは5‐6歳の子供並みなので、すぐに適応してしまう。ゾウは記憶力もとても優れているため、今回の件でゾウが道に迷ったという人もいるが、私たちはそうは考えてはいない。ゾウは通ったことがある道は必ず覚えているからだ。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年6月9日